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Oneboy

★第14試合 『夢の途中で』

「コーチ・・・負けちゃったよ・・・」
いつもの威勢のいい元気な声はそこには無く、
どうしていいか分からない表情でラケットをしまっている彼の姿があった。
「うん・・・見てたよ・・・ナイスゲーム・・・ドンマイ」
一言一言しか言葉を発せなかった。
それ以上は言葉と一緒に何か違うモノが溢れてきそうだったから。

勝者がいれば必ず敗者が存在している。
それは、どうしようもない事実。

現に、反対側のコートには満面の笑みで友人と喜びを分かち合っている選手の姿。
ちょっと後ろに目をやると、母親らしき女性が泣いている。
よっぽど嬉しかったんだろう。
理由だって何となく分かる。
と言うのは、2人の関係は、言ってみればライバル関係だったって事で、今まで何度も対戦してきたって事。
ただ、結果は今回の逆のパターンが非常に多かったって事。

この大会は小学生までが対象だから、来年はもうどちらも出られない。
俺は、最後の大会で「優勝させたいなぁ」と考え、彼は「優勝したいなぁ」と思ってた。
でも、相手サイドは違ったのかもしれない。
俺達以上に「優勝」の二文字を意識していたのかも・・・。
もっともっともっと、ああしてあげてれば、こうしてあげてれば、なんて思ったりしたけど、後の祭りだよな・・・。
あいつに「来年頑張ろうぜ!」が、言ってやれない。
ただその事が、どうにもならないその事が悔しい。

運営スタッフでもある俺は、表彰式の時に準優勝の彼に「銀メダル」を渡す役だった。
その時に「おめでとう」を言ってあげたかったんだけど・・・・、
いや、言ったんだけど、その次に無意識に出てきた言葉があったんだ。

「ごめんね」

聞こえたかどうかは分からなかった。
もしかしたら声になってなかったかもしれないから。

帰りのバスの中、疲れ果てて寝ている彼。
彼はどんな夢を見ているのかな?
きっと、もう次に向かってる夢だろうな。
そうだよ、君はまだまだこれからだ!
この経験が大きなモノとして貴方に残りますように。
最後に、

「今まで本当にありがとう。これからもよろしくな!」

腹減ったな!
さ、早く家に帰ろうぜ。


カテゴリー:~全力打球~編
2008/04/03 11:33

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