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another side of tennis

Scene 179 [Live & Let Die]

「知り合いがGuns観に行ったんですよ」
「へえ-、幕張?」
「そうそう、アクセルが太めになってたらしいんですけど」
「俺、前のドームの時観に行きましたよ」
「あ-っ、僕も。今回も“Paradise City”と“You Could Be Mine”だけでも聴きに行けば良かったかなと」

新しいプロジェクトが形になっての一息入れる呑み会。
フォアグラの串焼き、温泉玉子のピザで新規オープンの準備がほぼ終った事を労いつつ、次の展開をシュミレーション。
ちょっとほぐれて来たところでの会話。
隣のやたら腰の低い若手コーチもこの手の話が好きらしく、身を乗り出して来てる。

「ウチの5才の娘が好きになったんで一緒に聴いてたら、スピッツ好きになっちゃたんですよね」
「ウチの子供はエミネム聴いてますよ。エミネム!」
「うわ-、そりゃあ凄いや。俺も一枚しか持ってないもん。幼児がエミネムねえ。そう言えば“マシマロ”の頃の民生を武道館に独りで観に行ったんですけど、ダフ屋から買ったらほぼど真ん中の5、6列目で、若い奴等ばかり!」
「へえ-、それも勇気ありますねえ。でも民生はいいですよね」
「でね、“マシマロ”とか“イージュー★ライダー”とかシングルの曲が始まると蛍状態!「何人も携帯取り出してメールし出すの!来てないダチに<3曲目は“マシマロ”だよ!>とか送ってんだろうね」

“同じ匂い”を感じ取った後の会話は笑いと共に深くなる。
「当たり前ですけどテニスとゴルフは違いますからね、大変ですよ、特にゴルフはね。彼も今は腰低いけどわからないですよお。でも本当これで裏切ったら東京湾ですね」
“腰の低い若手コーチ”は相変わらずニコニコして会話を聞いてる。

話は最近観た映画の話に移り、更に自分が好きな映画の話に。
“腰の低い若手コーチ”の好きな映画のタイプは「ラブロマンス系」。
「ほう、やっぱりねえ」
「で、誰が演るラブロマンスがいいの?」
「ええっと…アル・パチーノです」
「ふうむ、アル・パチーノのラブロマンス…」

“アル・パチーノのラブロマンスが好きな腰の低い若手コーチ”が席を外した途端に二人で囁く。
「アル・パチーノのラブロマンスが好きって言うのは、“俺は実はこういうテイストなんだぜ”っていうアピールですかねえ」
「う-ん、なかなかいいところ突いて来ましたね」
ふと覗けた彼の感性に触れ、二人の間に“こいつはただ腰が低いだけの奴じゃない”という認識が生まれたのは間違いない。

いつの間にかこんな夜が少なくなった気がする。
自分が好きなものの良さをわかってもらおうとしたり、自分が好きで生業にしたものへの熱い夢を話したりといった、“大きくて迂闊な話”が少なくなったのは何故だろう?
当面食いつなぐ為の、小手先のテクニックなんていくら話してもつまらない。
いくつになっても「あっちっち!」となるくらいハートは熱くないとな。
何てたって、今でも“夜は無限”なんだから。

“アル・パチーノのラブロマンスが好きな腰の低い若手コーチ”と二人になったところで、彼がこっちに向き直って若干緊張した笑顔でこう言った。
「万が一私が裏切ったら東京湾に沈めて下さい!」

わかってるよ、アル・パチーノのラブロマンスを好きな奴がチンケな裏切りする訳ないだろ。
本当は“スカー・フェース”も好きなんじゃないか-!

2007.8.9
Koishikawa1


カテゴリー:Music
2007/08/09 16:40

筆者紹介:坂東海


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