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another side of tennis

Scene 155 [肴]

(腹減ったなあ…まあ生きてりゃじき朝飯かあ…)
相変わらずの与太話を肴に呑んで、口にしたのはお通しの大根ステーキ位。
いつもはそれで腹も減らずに帰るんだが、与太話がたまに行く辺りの蕎麦屋の話だったからか、職安通り迄の間にACBの斜め前の二郎のラーメン、西武新宿前の北京の揚げ焼き餃子が俺を誘いやがる。
河岸を変えりゃあ又呑み直したくなっちまうからな、我慢我慢。

今夜の与太話は面白かった。
受けたのは明治神宮に初詣に行った時の話。
そいつの会社は、毎年仕事始めは良くあるパターンで皆で明治神宮に行くんだが、ちゃんと本殿に上がって参拝するらしい。
「えっ?!何々?!じゃあ皆がお賽銭を投げ込むでっかいプールの向こうに行く訳?」「ええ。そこから廊下を通って地下に降りて行くんです」「じゃあ寒いでしょ?」「いやっ、それが暖かくて眠りそうになるんですよ」「冷暖房完備?」「って言うか、エアコンとかストーブとかじゃなくて畳が暖かいんですよね」「それは入れ替わり立ち代り参拝客が来て、ずっと誰かが座っているってこと?」「そんなんじゃなくてあれは絶対床暖ですよ!」「ま~じ!明治神宮で床暖!?」「本当ですって!だってずっと同じ温度で暖かいですもん!」「嘘だよ~」「いやっ!絶対本当ですって!」「そうかなあ~」………。

そんな話をしてたら深大寺で昼酒を呑んで来たって奴が、「あそこの蕎麦屋はつまみ美味いし、蕎麦は美味いし量もあるし安いしで、最高っす!近いなら行ってみて下さいよ!」「そっかあ、じゃあ行ってみるよ」なんて調子に乗ったから、店を出た後腹が減っちまったんだな。

話を聞くと、俺は深大寺なら武蔵境側から入った辺りの蕎麦屋に入るんだけど、そこは三鷹側から入ってすぐの所。
早速、翌日蕎麦好きのガキ共を連れて宿酔いのまま昼飯を喰いに行った。
車の中で寝ちまって「着いたよ!」と店の駐車場で起こされ、店の入口を見ると数十人並んでる。
(うわっ!止めようかな)とも考えたが、「時間見越して戻って来れば順番迄並ばなくてもいい」って言うんで、隣の水生植物園を散歩。
順路に従って歩いて行くと、深大寺城跡とあり、坂道を登り切ると芝生広場で柵の向うににはテニスコート。
(あっ!)と、そこがガキの頃に良く試合しに来てた名門クラブだと気付く。
フェンス越しに見た久々のそのクラブは、ガキの頃は前後左右コートだらけって感じだったのにどう数えても5、6面しかない。
コートに面した南側は宅地販売をしている。
肌寒い曇天の空模様がそのまま俺の気分に重なって来た。

一瞬、(でも東京で6面あるって凄いことだし…)と考えるが、頭を振って振り払う。
何でも金と数字に置き換えちゃいけない。
でも日本じゃやっぱりスポーツは、テニスコートどころじゃない広さのグラウンドをいつでもタダで使える学校スポーツがメインってことか…。
いかんいかん、こんなこと言うと又それをいい肴に絡んで来る奴がいるからな。
「オレハオヤガイシャモナイシヒモツキデモナイケドセカイニツウジルセンシュヲソダテルンダヨ!」

さて蕎麦だ。
店に入るとおばちゃん、お姉ちゃん達が暖かくもてなしてくれて気分がいい。
俺は天ぷらで呑んで、ガキは大盛りの蕎麦を音をたてて喰ってる。
蕎麦屋ってのはこうでなきゃな。
江戸時代は皆酒を呑みに来て話し込んでた場所なんだからさ。
何でも順位をつけて、何でもマニアックにじゃ疲れちまうよ。
でもこれを自分がちょっとかじってる事に当てはめると…。

店を出て植物園入口を挟んだ向うを見ると、さっき見たクラブへの入口の坂道だった。

2007.2.17
30m Street


カテゴリー:word
2007/02/22 19:56

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筆者紹介:坂東海


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