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another side of tennis

Scene 289 [I GET REQUESTS]

「高校の頃憧れてました。10年位前にはここで挨拶させてもらって」
お世辞とわかっていても褒められたり持ち上げられるのは照れる。
「その時俺すげえ嫌な奴だったでしょ?!」
と話の腰を折るのが精一杯。

山中湖のテニス民宿発祥の宿。
母校の中学校の合宿のヘルプに来た。
と言っても東京を出たのが夜8時過ぎだったらから、初日の呑みから参加。
勿論現役の姿はない。
コーチ役のOB達と定年退職したばかりの元顧問に、名誉OBとでも呼べそうな宿主。
今時の部活事情に学校事情とトッポジージョ。
そこに他校のチームが加わって来ての冒頭の会話。
彼と一緒に来てる現役女子選手も入って来て更にコアなテニス裏事情話。
44度の泡盛を開けきる前にお開き。

翌朝のランニング。
「集合」の声に集まって来る連中からはズッタラズリズリと靴を引き摺る音。
ラケットはだらしなく下を向いてブランブランしてる。
とてもじゃないがテニス部員の歩き方じゃあない。
コーチ達からは限られた時間を惜しんで、何とかしてあげたいという気持ちがありありと伝わって来るが、部員達からは「強くなりたい」「上手くなりたい」という気持ちは感じられず、「返事は!」と言われなければ返事もない。
当然コーチへの質問も要求もない。
自我が目覚めだす頃に感じる照隠しの感情が、ポーズからそのまま無関心、無気力、無責任として定着してしまうってのは良くある話だ。
そこのステップの途中で力をつけたり、小さな事でも達成感を味わえればそうはならないんだが、集団の悪循環が加わってしまうと事は厄介なんだよな。
救いはこれ又良くある話だが、一人一人個別に接すると“いい奴”がいるってこと。
コアな存在になれる者を一人でも増えて行けばいいのだが。

山中湖を夕方前に出る時の温度は24度。
湿気もなく車のエアコンは入らない。
それが上野原辺りから熱気を醸しだし、府中で降りたら夕方なのに32度+湿気。
そんな東京で数日後、エアコンの調子が悪い馴染みのバーへ。
エアコンは何とか31度キープしていて、時折「プシューッ」って音をたてて止まり、マスターがリモコンを「ピピッ」と押しての繰り返し。
「電気製品って気持ちが通じるからね!」
まあ座って酒を呑んでる分には十分だ。

今日発売のCDを聴く。
1曲目が流れ出し、二人で「うわっ、これ凄いね」と聞き入る。
“I GET REQUESTS〜Sion With Bun Matsuda〜”
ファンからのリクエストの上位10曲をアコギで録り直したアルバム。
1位から10位迄の順位そのままというのが信じられないいい曲順。
「独りで聴いたら泣いちゃうよな」とマスター。
3曲目が終わり4曲目に入った時、目の奥に涙が滲んだけど、それは黙っていた。

“I GET REQUESTS”
リクエストされる嬉しさ、昂り、誇り。
あの中坊達もいつかリクエストされる時が来るんだろう。
その前にくだらない自己主張じゃなくて、自分を高める為のリクエストが出来る様にならないとな。

4曲目の最後で常連が入って来た。
彼はバンドでギターを弾いてるが、SIONって感じではない。
(もうちょっと聴いていたかったな)という気持ちをマスターからも感じつつ、「暑いよねえ」と与太話がスタートした。
右耳でしゃがれ声を聴きながら、左耳を相手に向け、手を叩いて馬鹿笑いをしているうちにCDは終って、柳ジョージ&レイニーウッドの1981年の武道館ライヴがかかった。
そう、これも人生、これが人生。

2010.8.4
Shinjuku3


カテゴリー:SION
2010/08/10 08:37

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筆者紹介:坂東海


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