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another side of tennis

Scene 285 [壁打ちボード]

家人が自宅沿線でなくちょっと離れた駅に置いて来た自転車を取りに行ってやる事になり、ガキ共がここ数ヶ月毎朝走ってるのを真似して走ってみた。
娘が途中にあるデカイ公園でテニスが出来る事を期待して、バックパックにラケット2本を突っ込んで自転車で伴走。
いきなり急な坂になる方は避けて走り出したが、なだらかな方でもきつく数百m走った処で歩いてしまう。
身体じゃなくて頑張る気がないからとはわかっているから、気恥ずかしくてすぐに走り出した。

約2.5kmを走って自転車に股がると何か清々しい気分で、更に2.5km離れたこれまたデカイ公園に向かった。
目的は壁打ち。
ここの壁は80m近くあって、ちゃんとネットの高さに白線がひいてある(ちょっと高過ぎるが)。
プレーしている人達は殆どがちゃんとテニスウェアを着てる。
(この人達テニスが好きなんだなあ)とつくづく感じる。
「運動出来るカッコなら何でもいいですよ!」とアナウンスしているテニススクールが多いが、それは阿り過ぎなのかもしれない。
と言う俺のカッコはTシャツに自分で3/4に切ったGパンなんだが。
これはガキの頃、試合の時はテニスウェアで練習の時はTシャツを何枚も着替えてた時の名残で、まあ仕方ない。

2時間以上打ち続けてる娘を見て、(こんな場所が沢山あれば子供達がもっともっとテニスする機会が増えるのに)と考えて、ふと中高の母校に壁打ちボードがあった事を想い出した。
俺等の時は中学生男子、高校生男女が一緒に練習していた。
良くある話で下級生は球拾いばっかりだったけど、毎日朝練したり、早弁しといて昼休みに練習したり、やる気さえあればいくらでも練習出来た。
そしてテニスコートだけでなく壁打ちボートがあったから、独りでも十分ストロークの練習が出来た。

その壁打ちボードで、中間テストだか期末テストだかの期間の朝に練習していた時のこと。
ボードが隣接している体育館の窓から「うるさい!」と高校生に注意された。
格闘技系の部の強面の主将。
無視して打ち続けていたら降りて来て名前を聞かれた。
その日だか、次の日だか俺の一個上の中3の後輩部員が代りにシメに来た。
胸ぐらを掴まれて脅されて、喧嘩が強い訳じゃないんで跳ね返すでもなくふてくされて黙っていたら、相手も引込みがつかず長引いたところに、「やめろよ!相手は下だろ!やめろ!」と高校生が止めに入った。
文化祭で(カッコいいなあ)と憧れていたバンドのボーカルの人だった。
デッカイ体育館が満杯になる位人気があったバンドで、エアロスミスやヴァン・ヘイレンのコピーにオリジナルでのステージは圧巻だった。
彼が在学中に拓郎の作詞作曲でデビューした時は、"You Really Got Me"や"Runnin' with the Devil"を細身のジャンプスーツに包んでセクシャルに歌っていたステージングの差に愕然としたけど。

家に帰って、彼のDUO、SUPER BAD、エージ&テツの後の活動を検索してみたら、YOUTUBEで彼の"永遠"という曲に辿り着いた。
あの時、意地になって胸ぐらを離さなかった奴に向かって、何度も「やめろよ!下だろ!」と言って止めてくれた姿が鮮明に甦る。

彼の名は"高田エージ"。
今も日本全国、街から街へと歌い続ける旅をしている。

2010.6.10
Amanuma Clu


カテゴリー:word
2010/06/10 23:13

筆者紹介:坂東海


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