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another side of tennis

Scene 262 [She’s The Boss]

久々にブヨに刺された。
気分転換に行った那須のゴルフ場。
右足38ヶ所、左足55ヶ所の計93ヵ所。
これがスコアならまだ良かったが……。
帰りの車の中で足はみるみるむくみ始め、ねじ切れる直前のソーセージみたいにぱんぱんになった。
今、13年振りのウィンブルドン、クルム伊達公子選手とキャロライン・ウォズニアッキ選手の試合を見ながら足を掻いてる。

ブヨに刺されたのは2週間前。
その間に訃報が三つ。
母方の一番上の伯母さんが逝っちまった。
88歳だったとは言え、ずっと元気でその日も朝からいろんな所に顔を出して、一旦家に帰り又出ようとしたところだったらしい。
車をすっ飛ばして又北に向かった。
全く苦しまなかったという事がわかる“最後の寝顔”。
「起きなよ」と心の中で声をかける。
お悔やみの後とんぼ返りで車を東京に向かって走らせてたら、大好きな若手プロテニスコーチのお父さんが亡くなったという知らせ……。
二日前に「やばいってさっき聞いて……」と絶句してる奴を呑みに連れ出したけど、こんなに早いとは。
何とか通夜に出ようと調整してるところに、今度はテニス部の後輩のお父さんの……。
清志郎、三沢のこともあってえらくブルーになる。
行きつけのバーのマスターもつい先日呑み屋仲間があの世に行っちまって、「もうこれ以上俺の仲間を削り取らないでくれよ」とぼやいていたっけ。

そんな事がありながらも、まだブヨに刺されたところは疼く。
生きてるって事が無様に感じる時がある。
18の時に逝っちまったあいつの事を想い出すと恥ずかしくなる夜がある。
(これが生きてるってことか)なんてうそぶいてみる。

伊達選手の試合の中継が始まる前、届いたばかりのTEACのターンテーブル&カセット付CDレコーダーで、1985年に出たShe’s The BossのレコードをCDに焼いてみた。
プレーヤーが壊れて聴けなくなってた24年前のアナログレコードをiTunesで聴く。
Lonely At The Topのエネルギッシュなサウンドとエモーショナルなボーカル。
Hard Womanの切なさとその裏っかわの皮肉。
(すげえなあ……)と改めて聴き入ってたら伊達選手が13年振りにウィンブルドンのコートに入って来た。

行けなくなった俺の代りに有明に行った家人からの「グラフに勝ったよ!」というコール。
そのグラフとの二日がかりのウィンブルドン準決勝。
でも何か軋みを感じさせていたあの頃の伊達選手。
このまま続けていたら……とは思えなかった引退。
それが今プロスポーツ界では考えられないブランクを一気に埋めて、13年前の何倍もポジティヴなエネルギーを発して彼女は聖地ウィンブルドンの芝生の上にいる。
クレバーな頭脳とガッツというエンジンで出来たライジングサンという名のタイムマシンを彼女は天才的なタイミングで動かしてここにいる。

“Japanese Tennis Girl Here To Stay”
彼女は世界に向けて全身でそう表現していた。
間違いなく彼女の生き方はかっこいい。
それをリアルタイムで観てる俺達も悪くない。
ねっ、伯母ちゃん、生きてるだけでもうけもんだよね。
現状を楽しまないとだ。

2009.6.23
Kashimacho


カテゴリー:STONES
2009/06/25 23:11

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筆者紹介:坂東海


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