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another side of tennis

Scene 215 [はやく慣れることさ]

「すぐ慣れるから大丈夫!」
良く聞くし、口にする言葉だ。
言う側には便利で、言われた側も何となくその気になる。

「う〜ん、これは慣れてもらうしかないねえ」
レッスン内容のミーティングの席上で、なかなかいい案が出なかった時のこと。
「私が以前教育関係の仕事を手伝っていた時は、子供達に勉強でも生活面でも『慣れろ』というのは禁句で、それを口にするのは教育者の職務放棄と言われてましたよ」
場が一瞬シーンとして、ピリッとした空気になった。
テニスが好きで、子供達の指導に情熱を燃やしてる者同士の集まりでさえこうだ。
自分達が出来て当たり前の事をついつい軽く考えてしまう。
“慣れ”は“鈍さ”に直結するってのもわかってるくせに。
それからそのスクールのコーチは、プレーヤーを「すぐ慣れますよ」と励ますのでなく、具体的な方法を提示することに腐心する様になった。

コナーズの両手打ち、ボルグのトップスピン、マッケンローのサーブ、最近ではナダルのコートカバーと、皆“異様”だ。
慣例に“慣れた”末のプレーじゃない。
「こうあるべき」という考えから抜けられないイメージが貧困なコーチ、自分が体験して来た中からしか指導出来ないコーチには手に負えない暴れ馬。
マッケンローじゃないが、態度が悪ければ“テニス界の異端児”とでも呼ばれるんだろう。

テニス誌で「日本人プレーヤーはディサプラン(精神修養)が強すぎるため、自分に合わない、嫌なことでも、受け入れようとして、ストレスをためてしまいやすく、またリスペクト(相手を敬う)する気持ちが強すぎるため、コーチの言うことに服従したり、強いプレーヤーに対して絶対に自分の方が優れていると思えないのです」という記事を読んだ。
「日本人プレーヤー」を「日本のサラリーマン」に置き換えて、「コーチ」を「上司」に、「プレーヤー」を「同僚」とか「取引先」にしてビジネス誌に載せたら、何の違和感もない。
自分の周りだけは、アイデアと愉快なハプニングが満ち溢れてるいる様にしたいもんだが、それすらも誰かが見栄から始まる知ったかぶりと背伸び、保身に走るセコさが生む被害者意識に邪魔をされたりして、上手く行かないんだよなあ。

でもこの記事はこう続いて、何だか救われる。
「このディサプラン、リスペクトが強すぎるプレーヤーはグレートプレーヤーにはなりにくいものです。なければもちろん上にはいけませんが、錦織君はそのバランスがよかったのです」
せめて、「年上だから」「上役だから」「教師だから」「コーチだから」という傲りで、誰かの可能性ってやつを潰さない様にしたいもんだ。
「そんなのわからないの?」と言った後すぐには訂正出来なくても、後でフォロー出来る優しさ位は持ちたい。

疲れた足をひきづってまだ慣れない街を歩く なにをそんなに急いでいるのか だれもかれもが足早に通り過ぎる 息もできない電車の中で 眼のやり場がないから眼を閉じた むかいのオヤジは俺の足をふんづけたのにあやまりもしない はやく慣れることさ どうでもいいことだぜ はやく慣れることさ 誰かが言った “はやく慣れることさ/SION”

SIONはライヴでこの歌を唄う時、いつも最後に歌詞カードにはない言葉を唄う。
“はやく慣れることさ どうでもいいことだぜ はやく慣れることさ 誰かが言った 無理だぜ”
そう、無理だよな。

2007.4.17
Todainojo

※文中のテニス誌コメントは「スマッシュ2008年5月号」より引用


カテゴリー:SION
2008/04/17 20:10

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