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another side of tennis

[Another Side of Tennis] 坂東海

新宿ゴールデン街バーの片隅のテニスと音楽の与太話です。
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01

Scene 164 [Spicy Life]

頼まれ物で入ったスーパー。
何気なく通ったカレーコーナー。
[LEE(辛さ×20倍)]。
殆ど無意識に5箱位買い物籠に入れる。
(30倍はまだ出てないかなあ)と探したけど、夏限定だけにやっぱりまだない。
家に帰って箱を見ると、パッケージがちょっと違う。
良く見ると昔から変らないデザインに、勲章の様な吹き出しで「2006激辛激ウマ日本一決定戦ホームカレー部門優勝」。
(おお~っ、皆わかってんじゃん!)と嬉しくなった。

食べ歩き何て大げさなもんじゃないが、美味くて辛いカレーは探したもんだ。
[ボルツ]から始まり、今は[プーさん]一筋(たまにココイチやリトルスプーンにも行くけど)。
[ボルツ]時代?はほぼ毎日朝まで呑んでたから、昼は刺激を求めて辛いカレーって感じで、[ボルツ]は辛さMaxまで制覇。
食べ終えて「俺も大人になった気がするぜ!」とバカな事を言った覚えがある。
[プーさん]はね、もうFuckin’Great!で、一番辛いのじゃなくても大満足!
むしろ一歩手前でゆっくり味わいたいなんて気になる。
そしてこの店を出ると、俺と奴は必ずこう言う…「幸せ!」。

[激辛激ウマ日本一決定戦]のホームページを覗いたら、[LEE]の発売開始は1986年。
発売当初はどこでも売ってる訳じゃなくて、見つけたら買いだめ。
ある時なんて見つけたその足で、同じく[LEE]ファンのギタリストの家に向かって、途中のホカ弁で白飯を調達して、クーラーのない部屋で汗をダラダラ流して喰ったっけなあ。
バイト先のスクールでも、電気ポットの中に[LEE]を放り込んで喰ったよ。
[LEE]の30倍は暫く販売されていなかったのが、1996年に復活して夏のスペシャルアイテムとなってる…なんだかどっかのB級グルメっぽくなって来ちゃったな…。

1986年と1996年?甲斐バンドの解散と復活だ。
武道館5日間連続での解散ライヴ。
毎日通って毎晩呑んで、あげくの果ては最終日、甲斐バンドがビッグイベントをやった都有5号地(現都庁)に入り込んで呑んで…武道館の後の黒澤フィルムスタジオでのスペシャルライヴのチケットはダフ屋に電話して5万で買って(俺のすぐ後に電話した奴は10万、その次は15万って上がって行ったのは笑った)、あれが1986年。
ライヴは超満だったけど、働き出した奴が多くていつも一緒だったメンツが揃わなかった1996年。
そうそうこの年、俺と奴はハワイでちょいとしたセレモニーをしたっけな。
そして去年、2006年、10年後の2016年…。
何て、演歌歌手みたいに10年周期で物思いにふけってどうする!
とにかく“辛いものは残る”ってことだ!?

さてさてこの先俺はどこへ行くんだか、何をしでかすんだか…。
OK!OK!エネルギッシュにやって行くしかないよな!
俺にはまだ自分の心の中の声が聴こえる。

今夜は嬉しいメールが入ったから、もう1杯だけ呑んでから帰るかな。
おめでとう。
いつも通りフォアローゼスのジンジャエール割で乾杯しといたよ。
これからもお互いスパイスの効いた人生を楽しもうぜ。

2007.4.25
Hanazono3
カテゴリー:KAI
04/26 12:14
02

Scene 163 [三軒目の店ごと]

若干お付き合い気分で行った、協会の“勉強会”。
開始10分前に会場に着くと、席が指定されていて僕は何と最前列。
これが武道館でのライヴなら嬉しいけど、“勉強会”ではちょっと気が引ける。

今日の講師はウチの社長と“義兄弟”と呼ばれている他テニススクールの社長。
社長と“義兄弟”だけあって、僕もやたら一緒に呑む機会が多い。
最近の呑みはどこでも焼酎が多いけど、“義兄弟”は大のウィスキー好き。
僕もウィスキー好きだから、皆が焼酎を呑んでいる中二人でウィスキーを呑むことになったりもする。
社長もウィスキー好きで、三人で呑むとウィスキーのソーダ割り、ハイボール。
今夜もそうなるのかな。

“勉強会”が始まる。
テーマは、“義兄弟”の「会社誕生秘話」。
“出会い”=“縁”をキーワードに話が進んで行く。
テニスを生業とした正しくその時に、郷里でお父様が亡くなっていた話、会社独立の時に社員が奔走して資金を掻き集めた話で、“義兄弟”は目を真っ赤にする。
僕もグッと来る。
泪にグッと来た訳じゃあない。
そういう遠い絆の話をしているこの今に泣ける“義兄弟”にグッと来たんだ。
そしてこういう“機会”ってやつの大切さを感じる。
照れくさくて言えないこと、改めて今更言えないこと、そんなことを人に話す、人から聴ける“機会”。
まあこんなことを感じるってことは、僕も歳をとったってことかな。

当たり前の様にそのまま西口の呑み屋に流れる。
当然ウィスキー。
いつもの優しさに泪の裏打ちが加わった“義兄弟”に感動と感謝を伝える。
とは言え、いつも通り皆でデカイ声で話をして、わんこそばの様にグラスを空けて行く。
そして又当たり前の様に二軒目になだれ込む。
つまみは玉子焼きだけで神戸牛の様に呑む。
仕方ないよ、いい夜なんだから。
って、それは呑んべの言い訳か。

三軒目を出たところで24時ちょっと前。
流石に解散となって皆で新宿駅へ歩く。
僕はまだ夜を泳ぎたくて東口へ。

あれっ?!そう言えば主役の“義兄弟”はいつ帰ったんだろう?
失敗したなあ。
今夜こそ朝まで道連れにしようとしてたのに。
次は目を離さないぞ。

2007.4.18
Nishi-shinjuku1-8-3
カテゴリー:word
04/19 12:37
03

Scene 162 [新宿の歩き方]

週1回の本社勤務の日。
新学期が始まってラッシュ時の電車は超満。
近くの学生さんが行商のおばさんみたいにしょってるラケバが、周りの人を圧迫している感じでテニス関係者としては気が気じゃない。

いつもは神奈川の事業所に行く為に早朝の電車に乗る。
それでも“これよりは酷くない”というだけで、6時半でも急行は座れるどころかギュウギュウ詰め手前。
今朝の混み具合は、高田馬場で乗り換えて更に混んでる山手線に乗り換える事を考えると、その場で失神しそうな位。
高田馬場で降りるのはパスして、もう一駅我慢して西武新宿で下車。
小滝橋通りを代々木方面に歩き出す。
赤でも誰も立ち止まらない小便横丁の横断歩道を渡ると、途端にポケットティッシュ、フリーペーパー、サンプル配布のラッシュが始まる。

小田急百貨店前の宝くじ屋が簡易売場を組み立ててる。
宝のありかがこんなに簡単に組み立てられるなら、宝も簡単に手に入ればいいのに。
京王百貨店前のリムジンバス、新宿周回バスの乗り場辺りは観光客だらけ。
最近はアジアの人達が目立つ。
肌寒い朝だってのに、白人観光客が半袖のTシャツで歩いて来る。
「Have a nice day!」と声はかけずに、(新宿ってそんなに面白いかな…俺等にとっての42ndみたいなもんなんだろうな)と通り過ぎる。

甲州街道を渡って鳥茂の前。
真新しいネイビーのスーツ、今流行りのトップを立てて襟足を長くした若い男が歩いて来た。
(このパターン多過ぎだなあ)とすれ違った時、彼が右手に持っていた小さな本の指を挟んでるページが、どうやら新宿の地図だって事に気付いた。
(地方から就職して来たのか!そっかあ、頑張れよ!)
そう言えば、昨日小便横丁の横断歩道が点滅した時、皆気にしないで歩いている中、二人位点滅に煽られて小走りになってけど、同じ類いだったんだろうな。

マインズタワーの前迄来ると、左手にサザンテラスがありながらも目の前の小田急線の踏み切りを見てると、もう新宿って気はせず代々木って雰囲気。
住所が代々木って事だけじゃない。
イメージが湧かないなら、サザンテラスと東急ハンズを結ぶ連絡橋から、右に代々木駅、左に新宿駅と見て距離を比べるといい。
埼京線ホームが代々木寄りに張り出してる新宿駅が、そのうち代々木に達するんじゃないかって気がしてくるから。

さて着いた。
ウチの本社は代々木の中の“新宿”。
今日の夕方はここで、いくつかの事業所の責任者との月例会議。
それが終ったら当然呑み。
レッスンが終ってから駆け付けて来る皆を今夜は美味い空芯菜炒めを出すチャイニーズに連れて行ってあげよう。

新入社員クンも、早く新宿でいい店見つけろよ。

2007.4.11
Yoyogi2
カテゴリー:word
04/12 13:10
04

Scene 161 [ラン・フリー(スワン・ダンスを君と)]

スポーツ番組のコメンテーターに、そのスポーツと関係ないタレントが起用される様になったのはいつからだろう?
プロ野球のオールスター?まああれはお祭りだから正しい。
やっぱりプロ野球の副音声?これも副音声ならではの雰囲気で面白かったからOK。
ちょっといつからってのは思い出せないけど、とにかく陸上、バレーボールと「感動しました!」系のオンパレードの押し売りに辟易してチャンネルを変えてしまった。

プレーの最中の陳腐なコメントはまだ我慢出来る。
エンターテイメントとしてショー・アップするのもいい。
到底我慢出来ないのは、その競技の専門知識のない奴がするインタビュー。
専門知識って言うよりは愛のないって言う方が正しいか。
そんな奴等が出来る事と言ったら、ワイドショーの冠婚葬祭レポート並みのインタビュー。
最近だと某民放の世界フィギュア。
優勝して涙ぐんでいる安藤美姫選手に「今のお気持ちは?」………。
そして最後はお決まりの「これをご覧になっている皆さんへ一言!」。
勘弁してくれよ…。
お前は視聴者の代表でも何でもない、単なる野次馬の代表なんだからさ、「今の気持ちは?」と頭の悪い場違いな質問は仕方ないけど、いかにも「皆の代表です」みたいな態度をとるなよな。

何て、インタビューアー君だけを責めても仕方ない。
日本にはスポーツ文化ってものがないんだから。
“運動部”と文化部”、 “体育の日”に“文化の日”。
ガキの頃からこれじゃ、確かにスポーツ文化なんて理解出来ない。
そうでなきゃ“世界一”のアスリート達に、あれだけリスペクトのない態度をとれないよな。
でもなあ、グラミー賞とかアカデミー賞の授賞式のスピーチ位観てないもんかなあ。

(そう考えるとテニスって、マナー的にもプレー中はコメントし辛いし、タレントのコメンテーターっていないな…)と考えていたら、思い出した。
元阪神の掛布が引退したばかりの頃に、確か全豪オープンのコメンテーターをしてた。
そこで彼が言った言葉は、
グラフは“おっぱい”が大きいからフォアハンドストロークのフィニッシュが
人と違って右肩の上に行くんです」
これは皆で大うけした!素晴らしい!
何てくだらない話をする前に、テニス中継事情の今は、タレントコメンテーターどころかグランドスラムの中継だって怪しいんだから、そっちの方が問題だが。

そう言えば世界フィギュア男子フリーのゲストは松岡修造氏。
テニス番組のゲストに他のスポーツ選手が出てるもんなら、「何だよ、あいつ関係ないじやん!」とでも毒づくだろうに、修造氏がスケート番組に出てると、「スケートだけにコメントが滑ってるねえ」とギャグ飛ばす程度なんだから、全く現金なもんだ。

でも今回の世界フィギュアは、そんな周りの事は関係なく良かった。
俺はたまたま数場面観ただけだったが、いずれも選手のパフォーマンスは素晴らしく、モチベーションの高さとガッツが伝わって来た。
電波の悪い車の中の荒れた画面で観た高橋大輔選手のフリー。
浅田真央選手の凄い滑りの後の安藤美姫選手の滑り。
家族からは、日本人選手の出番を待っている時の期待感をたっぷり感じた。

“まぶしく輝く瞳だけが 夜の闇に穴を開ける 二人だけの橋をかけよう ラン・フリー スワン・ダンスを滑るように ラン・フリー ふるえだす生命のまま ラン・フリー スワン・ソングを奏でるように ラン・フリー 光 渡っていこう 愛しい人よ”ラン・フリー(スワン・ダンスを君と)/TOKIO

スポーツ番組に関わる人達、今度のフレンチとウィンブルドンのウィナースピーチは、是非観てくれよ。

2007.4.3
Suidobashi
カテゴリー:KAI
04/05 10:47
05

Scene 160 [T.V. Mix]

カラオケはあまり好きじゃない。
下手だからってことじゃなくて、お付き合い的盛上りがどうも…ってこと。
でもこの仕事=プロテニスコーチをしていると、スタッフは下は10代、上は50代だから、皆が何を歌っても古い新しいという尺度じゃなくて聴けるのが楽しい。

奥田民生は大学生のバイトが出たばかりの[愛のために]を歌うのを聴いてガツンと来て、その晩はそいつに何回も歌わせて、帰りにCD屋で即買った。
♪陸海空 いろんなとこから どこでも駆けつけましょう♪
凄いよなあ…この言葉とメロディの絡み。
こんなことを言うと、多分俺の直属の上司のヘッドコーチは、「それもいいけど甲斐の[HERO]の♪HERO、空はひび割れ HERO、太陽は燃えつき HERO、海は枯れ果てて 月は砕け散っても♪ってところもいいぜ!」って言う。
カラオケって言葉も、「アメリカってTVじゃ生演奏しないのが当たり前だから、日本でいうカラオケのことをT.V.Mixって言うんだぜ!」って説明するに決まってる。

数年前の那須でのジュニアキャンプ。
施設に着くや否やレッスンを始めて、盛り上がって来たら高原特有のスコール。
インドアは無かったけど幸い夕方には止む予報で、中断した分はナイターと早朝にレッスン出来そうで一安心したものの、問題は今をどうするかだ。
まずは各クラスに大部屋に分かれてビデオレッスン。
それでも雨はまだ止まない。
そこで出て来た案が皆でカラオケ。

これが凄かった。
子供特有のピッチのズレとキンキン声。
マイクがハウればそれはそれで面白がる。
子供達は誰かが歌っても気にしないから(持ち歌が少ないから?)、何回♪アンアンアン とってもだいすき~♪、♪おおきなのっぽの古時計~♪と聴かされたことか…。
その何回もリピートされた中でやたら気になる曲があった。
カラオケのしょぼい音でもかっこいいイントロ。
ピッチのずれた子供達が1本のマイクに群がって歌ってるってのに、響くメロディ。
思わず隣の子供に「これ何て曲?」って聴くと「ハネモネ!スピッツ!」と即答(後でスタッフに「何で子供達がこんな曲知ってんの?」と聞くと、「ポケモンの主題歌みたいですよ」とのことだったので、その時は納得してたが、最近になって某清涼飲料水のタイアップだったと判明)。

やっぱり東京に帰ったその足でCD屋に行って、すぐ手に入れた。
以前、家人の友人の車に相乗りした時にかかってた、パフィーの[愛のしるし]が気に入って(誰が書いたんかいな?)とクレジットを見たら草野正宗だったりしたから、スピッツ、ロビンソンという語感から遠ざけていたのはちょっと失敗だったな。

そんなことがあって最近、家人が車で良く聴くCDに[空も飛べるはず]を入れておいたら5才の娘が気に入っちゃって車だろうが、iTunesだろうが音楽が聴ける場所では必ず一緒に聴かされる羽目に。
で、これが又いい。
何がいいって、ちゃんと演奏してる。
「当たり前だ!」なんて言っちゃダメだよ、これが今はなかなかないんだからさ。
ちなみに僕と娘の今のお気に入りは[涙がキラリ☆]。

ところで僕は音として言葉が身体に入るまでは歌詞カードは見ないんだよね。
だからそのまま見ないこともあって、後で(あっ!?こんな歌詞だったんだ)なんてこともある。
最近iTunesの使い方を覚えた娘が、例によってスピッツをかけてた。
その時ふと飛び込んで来たフレーズがあったんだよね。
“君と出会った奇跡がこの胸にあふれてる きっと今は自由に空も飛べるはず ゴミできらめく世界が僕たちを拒んでも ずっとそばで笑ってほしい”
バンドマンとガキの感性に最敬礼…。

明日から1泊2日でスクール代表のジュニアトーナメント。
僕は引率で、スクール最寄駅から選手達と地区の待合せ場所に行って、そこからチャーターバスで皆で会場入り。
会場はインドア完備で雨でカラオケなんてことはないから、たっぷりプレーで皆の開けっぴろげな感性を見せてくれよ。
あっそうか!最近の観光バスはカラオケついてるんだよね?!
又何かいい曲教えてくれるかな。
でもなあ…、車内で君達の歌声を聴き続ける自信は正直言って、ない…。
やっぱ寝かせて…じゃなくて作戦会議しながら行こうぜ!

2007.3.28
Fujisawa
カテゴリー:KAI
03/29 16:56
06

Scene 159 [You Gotta Move]

この間酔っ払った某テニススクール社長(って言っても同い年だ)に一方的に聞かされた話の中で、奴がJTAのカンファレンスで紹介された、アメリカの元副大統領アル・ゴアの[不都合な真実]が頭から離れなくて読んでみた。
読み始めてすぐに、もう十年以上前になるのか、キースの言葉が頭に浮かぶ。
「俺達は自分達のガキにちゃんとした環境を残さないといけない。俺達のエゴでボロボロになった地球を奴等には渡せないだろ?」みたいなニュアンスだったはずだ。
もっともジャンキーの代名詞のキースに対してインタビューアーは、「地球の健康より貴方の健康の方が問題では?」と切りかえしたらしいが。

[不都合な真実]の内容云々は書評家じゃないんで言わない。
そこには、俺等がずっと前から薄々気付いていた事が、冷静に分析、提示されていて、「You Gotta Move」という、静かだけど熱い囁きがあるだけだ。
いや、“薄々気付いていた”ってのが問題なんだよな。
この本は多分、講演用にkeynote(Mac用プレゼンテーションソフト)で作られたデータが基になっている。
そのプレゼンで、一番最初に大きく強調される言葉はこれだ。

「災いを引き起こすのは、“知らないこと”ではない。“知らないのに知っていると思い込んでいること”である」マーク・トウェイン

ちょっと前に出たロバート・B・パーカーのジェッシイ・ストーン・シリーズ最新作[訣別の海]は、ある殺人事件が最後は、父親の自分の娘に対する“虐待”という結末で終る。
そこでジェッシイは「胸が悪くなる」と言いながら、「やるべき仕事をやるだけだ」と事件の解決に向かうが、事件の全容が見えて来た時にこういう会話がある。

「カネが人をだめにするわけじゃない」ジェッシイが言った。「自分が、自分をだめにするんだ。カネは破滅を蔓延させるのに役立つだけだ」
「私はお金を持ったことがないから」ケリー・クルスが言った。
「俺もだ。しかし、カネが実際そうしているところは見たことがある」
二人が黙っている間、通話中の回線の、音のないエネルギーが二人の間に漂っていた。
「このまま、捜査を続けてくれ」ジェッシイが言った。
「ええ、そうするわ」
「あれ以上悪くなり得ないと思っていた」
「今、なってしまったわ」
「それも、非常に」ジェッシイが言った。

どっちの本も俺なんかじゃどうしようもない大きな欲望が渦巻き、読んでいて不安になる。
でも作者が、主人公が誠実に立ち向かう姿を見て、もやもやした不安も怒りも諦めも一緒くたになった気分が和らぎ、ちょっと踏み出して見ようかという気分になる。

誰だって酷い目に会いたくないし、愛しい者を酷い目に会わせたくない。
でも“ちょっとなら”と考えてやっていることが、実は物凄い単位で、とんでもない速さで破滅に向かっていることが多々あるんだろう。
日本だけで大流行の砂入り人工芝は、リサイクル方法がまだなく、引っぺがされた物はどこかの山林に廃棄されるらしい。
それは他の産廃物と同様に楽しくプレーしてる人達には見えないし、わからない…。

<近所の小学校の机と椅子の足取付用にセットボール千個寄付したんですよ!>
猿に似た若いコーチからメール。
そうそう、まずは出来ることからやらないとな。
自分達でリサイクルは出来なくても、リユースは出来るもんな。

えっ?俺かい?
俺はさ、この冬極力暖房入れなかったし、入れても20度。
って言うか、寝静まった家で独りの為に電気つけるってのは環境に優しくないだろ?
だから夜な夜なゴールデン街で呑んでおいたよ。
今夜も、じゃなくて今朝も明るくなって電車が空いてからご帰宅だ。

うん、何だ?あのカメラマンの数は?
お?そうか、今日は都知事選の告示ね。
頼むぜ!政治家さんよ!
で、あんた等は誰の為に何をどうしたいんだい?

2007.3.22
Shinjuku Nishiguchi Ekimae

※ アル・ゴア[不都合な真実]:ランダムハウス講談社
※ ロバート・B・パーカー[訣別の海]:早川書房
カテゴリー:word
03/22 16:54
07

Scene 158 [下から2番目の男]

解雇された。
「お前は大丈夫」と、一週間前取締役に言われてたのに、今日いきなりだ。
この時期は年棒更新で毎年良くある話。
でもそれが俺自身の話になるとは努努思わなかったが。
ずっとこの業界一筋で生きて来て、後厄も終ってこれだもんな。

無理やり前職と言えば、大学時代のテニスのコーチ。
とは言っても俺は大した戦績もないし、おまけに指導歴もそれだけで戻るも何もない。
第一ずっとあの世界で生きてる仲間達に失礼だ。
もしあいつに相談したらきっと、「マスコミで派手に金稼いで使って来た奴が、今更他の仕事は出来ねえだろ?同じ世界で生きて行くしかないんじゃないの?」って言うな。

“この街で仕事を見つけ 正直に働いてきた だけど周りのお偉方 俺に出すサインはNo Good! ここでは俺はイエスマン 従うだけのイエスマン 意気地なしでは勤まらない 厚顔無恥の大都会 陽気に生きてくことさえ こんなに難しい 街角では浮浪者達の ホンキィトンク”

こんな歌詞が浮かんで、俺はGoogleで検索。
小山卓治
俺がコーチのバイトをしてる頃、やたら聴きまくってライヴに行きまくってた時期の、ファーストから3枚目迄を全曲唄うライヴがあるらしい。

俺は今ガーデンプレイスを通り過ぎてちょっとの、小洒落た建物の地下にいる。
アコギをメインに生ピ、エレピも使って卓治は独りで唄い継いで行く。
俺の頭に浮かんだフレーズ、[No Good!]はオリジナルのR&Rでなく、ブルージー。
何回聴いたか、何人に聴かしたかわからない[Passing Bell]でグッと来る。

“昔からみんなに優しい男と呼ばれてた 疑うことも知らずにあの子と一緒になったんだ この春に生まれた子供にあいつの名をつけた ありふれた暮らしのどこが悪いんだい こんな目に会うくらいなら 死に急いだやつが利口だ 息子の魂のために グラスを上げてくれ”

そして2部のラスト。

“ウソっぱちの履歴書で俺はやっと雇われた だけどだまされたのはどうやら俺らしい 絶望的なノルマがいつだって俺を急きたてる こんな調子じゃ週末に1杯やる余裕もない 最悪とまではいかないが ここぞってとこで決まらねえ 俺は下から2番目の男
主任はいつもイライラして俺達に当たり散らす 社長ときたらどんなやつかさえも知らない だけど俺の方がましだと思うようなやつもいる 口答えもせずドジを踏みうろたえるグズ野郎さ 最悪とまではいかないが ここぞってとこで決まらねえ 俺は下から2番目の男
俺はバッチリめかしこみ土曜の夜飲みに出た 一張羅に酒をこぼしたおっさんをぶん殴った 月曜の朝俺は突然 事務所に呼びだされ 俺に殴られた顔をはらした社長に首を切られた 最悪とまではいかないが ここぞってとこで決まらねえ 俺は下から2番目の男”

へへへっ、かっこいいじゃん、相変わらず。
RCと吉川晃司、ロケッツとのイベントで、西武球場で演った時のオープニングだったなあ。
OK!OK!辞めてやらあ!あんなところ!こっちから願い下げだあ!
“報われる夢をつかむんだ”

“いくつもの夜が過ぎて いくつもの朝を迎え 俺達ここで生きていかなければ ちっぽけなカーニバルに乾杯”

2007.3.11
Ebisu“switch”

※文中引用した楽曲:作詞・作曲 小山卓治
[No Good!][Passing Bell-帰郷][下から2番目の男][カーニバル]
カテゴリー:Music
03/15 16:52
08

Scene 157 [ヒートポリシー]

「マイケル・ジョーダンが引退記者会見の時にさ、「バスケットは引退後どう役立つのか?」っていう質問と、「世界中の子供達へのメッセージは?」っていう質問、「自分が上達の為に最も大事にしたことは?」っていう3つの違う質問に、どれも同じことを答えたの知ってる?知ってる訳ないか?!あのさあ、どれにも「バスケットは人を敬うこと、努力することを教えてくれた」っていう意味合いの答えをしたんだってさ」

奴は西が丘で今日明日テニス協会の講習。
田舎から出て来てるから今夜は新宿に泊まるんで、呑む相手に俺を呼び出した。
まだ時間が早くてゴールデン街って感じじゃないんで、久し振りにお多幸でおでん。
ちくわぶジャンキーの俺はひたすらちくわぶで麦酒。
おでんはちくわぶとじゃがいもとしらたきと爆弾だけでいい。
おでんの爆弾は、爆弾=玉子派と爆弾=巾着の中にいろいろ入ってるやつ派に別れるみたいだけど、俺は爆弾=玉子!シンプルなゆで卵!
玉子派もさつまあげ?の中に玉子が入っている派が主流らしいが。

「[不都合な真実]って知ってる?地球温暖化問題をゴアってアメリカの元副大統領が、あっお前ゴアってマグマ大使のことだと思っただろう?!まあそれはいいや。本も映画も観た方がいいみたいだぜ。本は増刷、増刷だってさ。で、何で[不都合な真実]の話かっていうと、オーストラリアン・オープンがやばいらしいんだよ。今年シャラポアが41度の中試合したってあったじゃん。ヒートポリシーもあるけど、あんなのしょっちゅうみたいよ。気温だけじゃなくて紫外線も相当キツイから、控え室には日焼け止めが山積みになってて、選手もボールパーソンも全身ムラ無く塗らないと大変なことになるんだって。ボールパーソンは帽子にサングラスに長袖だもんね。帽子は後ろにタオルみたいなのが垂れてるもんなあ。これで地球温暖化でもっと気温が高くなって行ったら、テニスどころじゃないぜ。外にも出れなくなるよ。日本でもさ、テニスプレーヤーの眼ににくじゅしゅだっけなあ何だっけなあ、とにかく紫外線障害がすげえ増えてるって。特にキャリアの長いコーチはやばいみたい。ここ数年夏はサングラスしてないとレッスン出来ないもん。日本人って感性が中坊だから、サングラス=不良とか態度悪いってイメージで、サングラス嫌う人多いみたいね。横浜銀蝿じゃないんだから。せめて浜田省吾くらいのイメージになんないかねえ。そうか!協会が浜田省吾使って「アウトドアのテニスはサングラスをかけよう!」とかやればいいんだよ!

あっそうだ!タイガー・ウッズの話もしたっけ?あいつって相手が勝敗を決めるパットを打つ時とかに、相手のことを応援するんだってさ。(外せ!)とか期待してると入った時にがっかりするじゃん?!だから相手に左右されない様に、いつも相手のことを応援するらしいぜ。期待ってのはこっちが勝手に決めることで自分の都合だから心理学的にはNGワードらしいよ。講師が上手い例えしてたけど、タクシーの運ちゃんは(長距離の客に当たらないかな…)って期待してるから、ワンメーターの客に当たるとブスッとしちゃうんだよ。だからいいタクシーの運ちゃんは、急いでる客だったら(何とか時間に間に合う様にしよう!)って応援するタイプらしいね。まあ(長距離の客来い!)って期待するのはわかるよなあ。でも俺そういう運ちゃんに当たって「~まで」って言って返事しないと椅子蹴るもんね」

お前さあ、いつまで喋ってんの?
そろそろゴールデン街も動き出す頃だから、河岸変えるか?
俺は独りで呑むのも好きなんだよなあ…。
お前ホテル帰って今日のまとめでもした方がいいんじゃない?
えっ?予約してない?!朝まで呑む?
マ~ジ…。
あっCメール。
<25時過ぎに合流する>………最低………。
誰かお願いだからこいつらに、ヒートポリシーを適用してくれ。

2007.2.25
Shinjuku3
カテゴリー:word
03/08 18:53
09

Scene 156 [Keep Us Happy!]

語るに落ちる、言葉なんていらない夜がある。
パーパーパーパーくだらないジョークを飛ばしてる中でふとこぼれ落ちる言葉がある。

三軒目のバーのカウンター。
奴がポケットの中からくしゃくしゃの紙を取り出す。
俺は与太話を続けながら、サインして返す。
何の紙だかはここじゃ言わない。

何年前だったか、確かクリスマス前後の夕暮れ。
独りでジョン・レノン・ミュージアムに行って、最後のFINAL ROOMで涙がにじんだ後、出口を出たところで奴からメール。
その時の目の前のブルーのイルミネーションを今でも思い出す。
翌日小便横丁の寿司屋で落ち合った。
「大変だったね」
それだけで俺等はいつも通り呑んだ。
テニス好きの親父さんは、寿司を握りながらやたら気遣ってくれたっけ。

二丁目で呑んで終電で帰ろうと、靖国通りと明治通りの交差点を渡っている時に、奴の彼女に携帯を鳴らされたこともあった。
奴と喧嘩して独り途方にくれてるとのことで、靖国通りを駆けて迎えに行って、二軒目に向かった俺の仲間と合流して朝まで呑んだ。
おまけに締めのラーメン屋で喧嘩もしたな。
そこで一番やり合った女と忘れ物の受渡しか何かで、その晩奴も一緒に3人で飯喰ったって聞いた時は呆れたよ。

ゴールデン街で3人で呑んだ回数は数えるのもバカらしい。
初めて連れてってやったのはいつだっけ?
今度3人で呑む夜は忘れられない夜になるかな。
“くるみ”でも聴きながら乾杯しよう。
勿論KAIヴァージョンな。
当然奢れよ。
俺のポケットには穴があいてて、宵越しの金なんか持ってたことがないんだしよ。

とにかく良かった。
おめでとう。

I need a love to keep me happy!Keith Richards

2007.2.27
Nishishinjuku2
カテゴリー:word
03/01 19:55
10

Scene 155 [肴]

(腹減ったなあ…まあ生きてりゃじき朝飯かあ…)
相変わらずの与太話を肴に呑んで、口にしたのはお通しの大根ステーキ位。
いつもはそれで腹も減らずに帰るんだが、与太話がたまに行く辺りの蕎麦屋の話だったからか、職安通り迄の間にACBの斜め前の二郎のラーメン、西武新宿前の北京の揚げ焼き餃子が俺を誘いやがる。
河岸を変えりゃあ又呑み直したくなっちまうからな、我慢我慢。

今夜の与太話は面白かった。
受けたのは明治神宮に初詣に行った時の話。
そいつの会社は、毎年仕事始めは良くあるパターンで皆で明治神宮に行くんだが、ちゃんと本殿に上がって参拝するらしい。
「えっ?!何々?!じゃあ皆がお賽銭を投げ込むでっかいプールの向こうに行く訳?」「ええ。そこから廊下を通って地下に降りて行くんです」「じゃあ寒いでしょ?」「いやっ、それが暖かくて眠りそうになるんですよ」「冷暖房完備?」「って言うか、エアコンとかストーブとかじゃなくて畳が暖かいんですよね」「それは入れ替わり立ち代り参拝客が来て、ずっと誰かが座っているってこと?」「そんなんじゃなくてあれは絶対床暖ですよ!」「ま~じ!明治神宮で床暖!?」「本当ですって!だってずっと同じ温度で暖かいですもん!」「嘘だよ~」「いやっ!絶対本当ですって!」「そうかなあ~」………。

そんな話をしてたら深大寺で昼酒を呑んで来たって奴が、「あそこの蕎麦屋はつまみ美味いし、蕎麦は美味いし量もあるし安いしで、最高っす!近いなら行ってみて下さいよ!」「そっかあ、じゃあ行ってみるよ」なんて調子に乗ったから、店を出た後腹が減っちまったんだな。

話を聞くと、俺は深大寺なら武蔵境側から入った辺りの蕎麦屋に入るんだけど、そこは三鷹側から入ってすぐの所。
早速、翌日蕎麦好きのガキ共を連れて宿酔いのまま昼飯を喰いに行った。
車の中で寝ちまって「着いたよ!」と店の駐車場で起こされ、店の入口を見ると数十人並んでる。
(うわっ!止めようかな)とも考えたが、「時間見越して戻って来れば順番迄並ばなくてもいい」って言うんで、隣の水生植物園を散歩。
順路に従って歩いて行くと、深大寺城跡とあり、坂道を登り切ると芝生広場で柵の向うににはテニスコート。
(あっ!)と、そこがガキの頃に良く試合しに来てた名門クラブだと気付く。
フェンス越しに見た久々のそのクラブは、ガキの頃は前後左右コートだらけって感じだったのにどう数えても5、6面しかない。
コートに面した南側は宅地販売をしている。
肌寒い曇天の空模様がそのまま俺の気分に重なって来た。

一瞬、(でも東京で6面あるって凄いことだし…)と考えるが、頭を振って振り払う。
何でも金と数字に置き換えちゃいけない。
でも日本じゃやっぱりスポーツは、テニスコートどころじゃない広さのグラウンドをいつでもタダで使える学校スポーツがメインってことか…。
いかんいかん、こんなこと言うと又それをいい肴に絡んで来る奴がいるからな。
「オレハオヤガイシャモナイシヒモツキデモナイケドセカイニツウジルセンシュヲソダテルンダヨ!」

さて蕎麦だ。
店に入るとおばちゃん、お姉ちゃん達が暖かくもてなしてくれて気分がいい。
俺は天ぷらで呑んで、ガキは大盛りの蕎麦を音をたてて喰ってる。
蕎麦屋ってのはこうでなきゃな。
江戸時代は皆酒を呑みに来て話し込んでた場所なんだからさ。
何でも順位をつけて、何でもマニアックにじゃ疲れちまうよ。
でもこれを自分がちょっとかじってる事に当てはめると…。

店を出て植物園入口を挟んだ向うを見ると、さっき見たクラブへの入口の坂道だった。

2007.2.17
30m Street
カテゴリー:word
02/22 19:56
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