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another side of tennis

[Another Side of Tennis] 坂東海

新宿ゴールデン街バーの片隅のテニスと音楽の与太話です。
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01

Scene 295 [俺の声]

今年の東レPPO。
スキアボーネとの準決勝。
デメンティエワのパフォーマンスは素晴らしかった。
突如の引退。
スキアボーネに勝利した後にサインをもらった娘は心底驚いていた。

ジャパン・オープン準決勝。
ナダルとトロイツキの闘いも素晴らしかった。
「本当はナダル負けてたよね?!」なんて声も聞こえる。
トロイツキはその数週間後にツアー初優勝を遂げた。

バリでクルム伊達公子はイバノビッチに敗退。
大阪でのタナスガーン戦に続きフルセットでの敗退。
でも彼女は今40才にして世界46位で日本女子最高位。
シャラポア、サフィーナ、ハンチュコバ、今年破ったビッグネーム多数。
でも彼女はそれで満足してないし、誰もそう思ってない。

全日本選手権女子決勝。
米村知子は3回目の挑戦で又しても涙を呑んだ。
「3度目の正直という思いで決勝に挑んだが、私の夢を叶える事が出来ませんでした」
「思い」と「想い」。
「3度目の正直という」に続く「おもい」に、どちらが合っているんだろうと暫し悩む。

そして俺は1986年から聴き続けてる曲を頭で鳴らす。
SIONの"俺の声"

"色褪せても笑うヒーロー達の写真は 栄光と挫折を一度に晒してしまう いらつかせる夜が 今日も眠らせちゃくれない 闇の中を俺は 睨みつけるしかない"

今夜も沁みる。
サビは、

"俺は王様だと思ってた 俺の声で誰でも踊ると思ってた だがしかし 俺の叫ぶ声は ピンボールさ はねてるだけ"

報われない悔しさ、虚しさ。
それを越える為に今がある。
カテゴリー:Tennis
11/10 11:46
02

Scene 294 [Good Audience #2]

目の前2mのところに石川遼がいる。
最終ホールの第2打。
ラフに入ったボールを「道が見える」と一言発し、グリーンに向かって打った。
どんな擬似音も当てはまらない物凄い打球音がした。
TV収録用のマイクがその音を拾って、スピーカーがハウったのかと思った位だ。
しばらくして、藤子不二雄Aはプロゴルファー猿の打球音でこんな音を表現したかったのかなあと、どうでもいい事すら頭に浮かんだ。
石川遼がグリーンに向かって歩き出すと、近くの人達がターフが取れた跡を撫でてる。
大相撲で引き上げてくる勝った力士の背中を叩く客の様だ。

この日は完全クローズドの9ホールのみのイベント。
参加プロは石川遼、丸山茂樹、藤田寛之、宮本勝昌の4名。
招待客は約2,500人でこれは通常の大会の1/4以下らしい。
若干遅れて着くと既にスタートしていて、MCがいて遠くからアナウンスや歓声が聞こえる。
ゴルフ通の知人の言うがままに4番のティーインググラウンドへ。
暫くするとスピーカーを積んだカートが滑り込んで来て、俺等の真横を石川遼が通って行った。
「顔ちっちぇえ!」
TV縦横比現象なのか、初めて生で見た彼は本当に顔が小さくてスリムだった。
そしてそのホールはドラコン獲得。
そこで気付く。
殆どミスをしないでフェアウェイを歩いて行く選手達にずっとついて行くのは無理だ。
隣のミドルのグリーンで待っていたらあっと言う間にやって来て、ティーショットを放ち、こっちに向かってズンズンやって来る。
そんなこんなで冒頭のシーン。
ゴルフ通2人の読みで、この辺が第2打だろうって所に陣取っていたら、来た。
しかも石川遼のボールがフェアウェイを外れて、正しく俺等の足元に。

すんげェものを観ちゃったなとしか言えない。
然程ゴルフを知らない俺でも、世界を相手に戦うプロってのはこうなんだなと納得した。

観戦中の彼等との距離感は田園クラブで観たジャパンオープンみたいだった。
今でも覚えてる。
あのクラブハウスの前で試合を観ながら談笑しているオランテスが気軽にサインくれたり、九鬼さんが皆が書き込んでくれた色紙を見て、「俺真ん中でいいのかなあ」とペンを走らせてくれたのを。
あの時の俺は中2。
楽しかった。
もっと強くなりたい!とポジティヴに感じた。
ゴルフ観戦も子供達にそんな想いを抱かせるんだろう。

「国技館の焼き鳥って美味いんだからさ」と子供を相撲観戦に連れ出すシンガーの話を聞いた事がある。
俺達もテニスキッズの手を引っ張って有明に行こうや。
カテゴリー:Tennis
10/25 15:10
03

Scene 293 [Good Audience]

ナダルが有明のセンターコートに姿を現した。
数分前に圭が負けてしまった喪失感を補って余りある歓声と熱気。
これが世界一ってやつか。

駅を降りてコロシアムブリッジを渡っていると、コート側の階段に人が鈴なりになっている。
つられて観てみると、真ん中のコートで圭、その隣でナダルが練習していた。
コロシアムではロディックvs伊藤竜馬の1stセット中。
それなのに練習コート周辺は幾重もの人垣。
照明台座、水飲み場、ゴミ箱、登れるものには必ず誰かが登って、ナダルとナダル越しに圭を見つめている。
そこで鉢合わせたジュニア強化コーチは、「凄い音させてますよねえ」とナダルにため息。

そんな後のナダル登場。
右隣には「ナダルが観たい」と学校を早退して来た長男。
左隣のプロテニスコーチは、試合開始直前に息を切らせながら席に戻って来た。
「豪とモンフィスをちょっとだけでも観ておきたくて」
「どうだった?」
「結構いい感じでしたよ」
このやり取りを聞いていた長男が、「ちょっとしたら観に行こうよ」と来た。
ナダルが観たくて、正しくナダルが目の前で試合を始めようって時に大したもんだ。
とは言え、1stが5-2ナダルになったところで、どうしても気になって1番コートへ。

ナダルが初めて日本で試合をしている最中だというのに、物凄い観客の数。
デ杯監督、フェド杯監督をはじめ主だった強化コーチが連なり、試合中でない日本選手も殆どいる様に見受けられる。
1stはタイブレーク10-8でモンフィスで2ndは1-1。
練習コートで合ったコーチが寄って来て試合状況を教えてくれた。
「セットポイントがあったんですけどねえ。ちょっと待っちゃって取られちゃったんですよ。
その次のポイントがアグレッシヴに行って獲っただけに惜しかったですよ」
モンフィスはかなり辛そうだった。
フェンスに手をかけうつむき、まるで宿酔いの様に落ち着きなく動いてる。
彼のイメージからか、ドレッドに巻いた白くぶっといヘアバンドがでかいヘッドフォンに見間違える。
2 ndも添田選手に何回もいい波が来る。
応援者からは学生テニスの様なかけ声がかかる。
モンフィスはスライスでしこってる。
あの長い手足でしこりに徹しているんだから、そりゃあ良く返す。
そしてしっかりボールの後ろに入った時だけは、呆れるな速さとコースでエースを奪う。
そんなモンフィスを崩しきれず5-4になったが、まだ添田選手にも分があると誰もが感じ応援してる。
目の前にいる岩渕プロが「まだ行けるぞ!ここだ!ここ!」と声をかけた。
結局、2ndは6-4。
試合が終ってベンチに戻った両者は暫く動かない。
モンフィスは肩で息をしてうつむき、添田選手は唇を噛み締め一点を見つめたまま。
添田選手がコートを出る時思わず「ナイスゲーム!」と声をかけた。

「楽しいだろ?!早いラウンド観に来るのって」
押しつぶされながらガスケのサインをGetしたガキは嬉しそう。
予選を観に来て、しこたまサインをもらった友人の子供の話をすると、「え〜いいなあ、今度は予選から来たい。嵐のサインよりプロテニス選手のサインの方が価値あるよね!」
う〜む、嵐のサインとの比較はムツカシイ……。
まっ、こういうのはビッグテニストーナメントならではの楽しみ方だ。
コンサート、プロ野球じゃなかなかこうは行かない。

さっ、次はいつ行く?有明へ!
カテゴリー:Tennis
10/10 15:01
04

Scene 292 [毎日がテニスの日]

「男の子、男性は手を叩いて下さ?い!」
「次は女の子、女性は手を叩いて下さ?い!」
「じゃあ今度は学年別に行こうかな。まずは1年生!」

体育館に集まった児童とその家族を前にシンガーは、“リサーチ”から講演ライヴをスタートさせた。
その後はバイオリンでJRの踏切の音、次に小田急線の踏切の音、更には会場沿線の西武線の踏切の音を再現してみせて、会場に感嘆と親近感を覚えさせ、演奏に入って行った。
シンガーの名前は“増田太郎”。
20歳で失明したというプロフィールを臆せず、デフォルメもせず、エンターテイメントする姿に、今更ながら(人ってのはコミュニケーションが大事で、それが自分が好きな事、得意な事で出来るのは素晴らしい事なんだな)と改めて気付かされる。

オーラス前、「エッセイにもつけたタイトル」と“毎日が歌ってる”という曲が始まった。
(“毎日歌ってる”じゃなくて“毎日が歌ってる”なんだ)と、[が]が入らないその訳や、そう表現したい彼の感性に想いを馳せて聴き入る。
“やれるんだ 出来るんだ 今の自分でも こんな自分じゃ 何一つ 出来ないと思ってた 描いてた未来とは少し違うけど あの頃より確かに僕の毎日が歌ってる”
そんな歌詞を青臭く感じず聴いてる自分にちょっと驚いていると、一昨日の豪雨の有明でのワンシーンを思い出した。

一昨日、9月23日はテニスの日
この日を中心に趣向を凝らしたイベントが日本各地で行われている。
“聖地”有明テニスの森はそのメイン会場として、テニス界のいろんなポジションの人達がボランティアとして駆けつけ、テニスへの感謝の気持ちを込め、様々なイベントを行う。
スタッフの為に用意される弁当の数は約300個。

前日仕込みをしたスタッフが当日も早出で、7時前からどんより曇った空の下で設営を開始。
僅かに用意されている当日受付分を目指すテニスフリークも既にチラホラ。
大半のスタッフも集合時間よりかなり早く集まって来ている。
「何とか午前中、ボレーボレー迄は出来そうだね」
「始まっちゃえば何とかなるよ」
でも、不安を打ち消そうとそんな言葉を掛け合い、会場を作り上げて行くスタッフ達の上に雨が落ちて来た。
最初は「大丈夫!大丈夫!」と言っていられたが、雨粒は見る見るうちに大きくなり、ハードコートは水浸し。
「砂入り人工芝はまだ行ける」と言ってるうちに更に雨脚は強くなり、無情の中止。
それでも集まってくれた数百人の人達の為に何とかしようと、各メーカーはお土産を用意し、翌日から予選開始の東レPPOはコロシアムでの選手の練習を数時間見学可としてくれる等粋なはからいを見せてくれた。
そしてコーチ達は雨が止んだ隙をついて、何とかプレーが出来そうな砂入り人工芝コートに飛び出して行ってワンポイントレッスン開始。
それなのに又雨。
それもいきなりバケツをひっくり返した様な雨、“Buckets Of Rain”。
“やらなきゃいけないことをやるだけだよ。だからうまく行くんだ”
(Buckets Of RainBob Dylan)
あの激しい雨の中、コートから出てくる人達の顔は皆笑顔だった。

撤収作業が終り、学生ボランティアへテニスの日実行委員長が挨拶。
感謝の言葉の合間に彼はこう言った。
「我々テニス界で生きる者にとっては毎日がテニスの日だ」
同じ場にいたプロテニスコーチ達は皆頷き、気持ちが通じ合っているのが良くわかった。
常にテニスを愛し、広めたいという気持ちが学生達に伝わっただろうか。

学校ライヴのシンガーも、単に子供ウケを狙う事は出来たんだろう。
でもショートカットの言葉や振る舞いは心には残らない。
その時届かなくても、心の片隅に残っていた言葉を噛み締める夜は無数にある。
誰かに、何かに、真摯に向き合う時が来た時に、フラッシュバックする言葉、想いは俺等の心の扉の中にあるんだぜ。

2010年9月23日、有明にいた全てのテニスフリークに感謝します。

カテゴリー:Dylan
09/25 23:59
05

Scene 291 [通り過ぎる夏 #2]

君がくれた夏の記憶
ひとつふたつ閉じる前に
いちどやさしー雨の朝に
ぬれに行こう 目さます前に
通り過ぎる夏

風に揺れる はっぱ ぼんやり見ていた
君の匂い 胸いっぱい吸いこんだ
ぼくはもう行くよ 行かなくちゃ
きっといつか会えるだろう
MY SWEET SWEET BABY YEAH!
遠くから想うよ
通り過ぎる夏

ぼんやりしてたら 町から町へと
俺のほほ流れるのは
これは涙か いやなんだこれは OH!
このまま君の顔 忘れてしまいそう Baby
帰ろうかな やめとこうかな
通り過ぎる夏

俺は知らねー
何も聞いてない
夏の記憶も
風に揺れるはっばも
ぼんやりばっかしてるほど
まだ涙は枯れてねーぞ
温泉行きてーなー
海水浴に行きてーなー
来年40
通り過ぎる夏
カテゴリー:word
09/10 23:59
06

Scene 290 [通り過ぎる夏]

「終った事を気にしてると長生き出来ないよ!」
ガキが笑いながら冷やかして来て、娘も家人も笑いながら相槌を打つ。

軽井沢の友人別荘。
苔のむす庭でのBBQ。
友人とはジュニアテニスチームの後輩の元女子ツアー選手。
「これね、ルーマニアのドンペリ」
と、旦那がスパークリングワインをついでくれる。
奴は陽気なフランス人。
シャンパンの輸入もしていて当然ワインには詳しい。
ルーマニアのドンペリ、これが値段を聞いてビックリ。
安い。
「1,500円も出せば十分美味しいワインが手に入るよ」
確かに美味かった。
ナスターゼも呑んでるのかな。
「明日何してるの?」
「ホテルのコートでテニス」
「じゃあ明日も家来なよ。横のコート取ってあるから」

翌日手入れの行き届いたクレーコートで約3時間。
たっぷり楽しんで又庭でのハンバーガー会。
その後は「高校卒業後は自立しなければいけない」という家訓の為に、ここを通りがかった車相手に1台500円で洗車のアルバイトをしているという、奴の娘2人に当然洗車をオーダー。
そこでやっちゃったんだよな、車の入替えの時に。
軽井沢特有の低い溶岩の石垣でバンパーを。
それを受けての冒頭のガキの台詞。
お前に"Daddy you're a fool to cry"って言われるなんてなあ。
Thank You!

翌日帰る前に旧軽を流していたら奴からメール。
<忘れ物してるよ!>
又しても奴の別荘へ。
子供達は車から飛び出して庭を走って行く。
近付いて来た奴と小さな声でさっき知った事を伝える。
「N先生が今朝倒れてやばいらしい」
「えっ?!」
「何かわかったら又連絡する」

奴の娘達とウチのガキ共が大声で叫んでる。
「渋滞してるからご飯食べて行きなよ!」
「そうだよ!食べて行こうよ!」
流石に今日はと遠慮して車を出したら電話が鳴った。
「渋滞ひどくなってるみたいだよ!」と可愛い声。
南軽井沢の交差点の表示は確かに渋滞が伸びてる。
「OK。じゃあお世話になるよ。ピザでも買ってく」
「本当!トロピカル買って来てね!」

渋滞も終った高速を飛ばして24時半に帰京。
"君がくれた夏の記憶 ひとつふたつ閉じる前に いちどやさしー雨の朝に
ぬれに行こう 目さます前に 通り過ぎる夏"(通り過ぎる夏/O.P.KING)
カテゴリー:Stones
08/25 20:14
07

Scene 289 [I GET REQUESTS]

「高校の頃憧れてました。10年位前にはここで挨拶させてもらって」
お世辞とわかっていても褒められたり持ち上げられるのは照れる。
「その時俺すげえ嫌な奴だったでしょ?!」
と話の腰を折るのが精一杯。

山中湖のテニス民宿発祥の宿。
母校の中学校の合宿のヘルプに来た。
と言っても東京を出たのが夜8時過ぎだったらから、初日の呑みから参加。
勿論現役の姿はない。
コーチ役のOB達と定年退職したばかりの元顧問に、名誉OBとでも呼べそうな宿主。
今時の部活事情に学校事情とトッポジージョ。
そこに他校のチームが加わって来ての冒頭の会話。
彼と一緒に来てる現役女子選手も入って来て更にコアなテニス裏事情話。
44度の泡盛を開けきる前にお開き。

翌朝のランニング。
「集合」の声に集まって来る連中からはズッタラズリズリと靴を引き摺る音。
ラケットはだらしなく下を向いてブランブランしてる。
とてもじゃないがテニス部員の歩き方じゃあない。
コーチ達からは限られた時間を惜しんで、何とかしてあげたいという気持ちがありありと伝わって来るが、部員達からは「強くなりたい」「上手くなりたい」という気持ちは感じられず、「返事は!」と言われなければ返事もない。
当然コーチへの質問も要求もない。
自我が目覚めだす頃に感じる照隠しの感情が、ポーズからそのまま無関心、無気力、無責任として定着してしまうってのは良くある話だ。
そこのステップの途中で力をつけたり、小さな事でも達成感を味わえればそうはならないんだが、集団の悪循環が加わってしまうと事は厄介なんだよな。
救いはこれ又良くある話だが、一人一人個別に接すると“いい奴”がいるってこと。
コアな存在になれる者を一人でも増えて行けばいいのだが。

山中湖を夕方前に出る時の温度は24度。
湿気もなく車のエアコンは入らない。
それが上野原辺りから熱気を醸しだし、府中で降りたら夕方なのに32度+湿気。
そんな東京で数日後、エアコンの調子が悪い馴染みのバーへ。
エアコンは何とか31度キープしていて、時折「プシューッ」って音をたてて止まり、マスターがリモコンを「ピピッ」と押しての繰り返し。
「電気製品って気持ちが通じるからね!」
まあ座って酒を呑んでる分には十分だ。

今日発売のCDを聴く。
1曲目が流れ出し、二人で「うわっ、これ凄いね」と聞き入る。
“I GET REQUESTS〜Sion With Bun Matsuda〜”
ファンからのリクエストの上位10曲をアコギで録り直したアルバム。
1位から10位迄の順位そのままというのが信じられないいい曲順。
「独りで聴いたら泣いちゃうよな」とマスター。
3曲目が終わり4曲目に入った時、目の奥に涙が滲んだけど、それは黙っていた。

“I GET REQUESTS”
リクエストされる嬉しさ、昂り、誇り。
あの中坊達もいつかリクエストされる時が来るんだろう。
その前にくだらない自己主張じゃなくて、自分を高める為のリクエストが出来る様にならないとな。

4曲目の最後で常連が入って来た。
彼はバンドでギターを弾いてるが、SIONって感じではない。
(もうちょっと聴いていたかったな)という気持ちをマスターからも感じつつ、「暑いよねえ」と与太話がスタートした。
右耳でしゃがれ声を聴きながら、左耳を相手に向け、手を叩いて馬鹿笑いをしているうちにCDは終って、柳ジョージ&レイニーウッドの1981年の武道館ライヴがかかった。
そう、これも人生、これが人生。

2010.8.4
Shinjuku3
カテゴリー:SION
08/10 08:37
08

Scene 288 [底辺×高さ÷2]

暑い。
とにかく暑い。
毎年言ってるんだろうけど暑い。
昨夕都下から埼玉に向かい、陽が落ち始めた埼玉で車のインパネの温度計が37度から39度に上がった時はビックリした。

このクソアツイ中、テニスしている友人、知人から頻繁にメールが来る。
「焦げました!」「ビールが美味いっす!」「呑みに連れてって下さい!」
こんな言葉がイントロかアウトロに必ず入ってる。
中身は勿論千差万別。
季節がら関東ジュニアや、部活合宿に絡んだものばかりだけど。

そんな中、テニスコーチ達の熱意に相変わらず感服したりもしてる。
レッスンの合間に、熱の塊になってコートから戻って来て、「お疲れ様です!」と水分を補充して又コートに戻って行くのを見てると、コーラの一杯位は奢らざるをえない。
仕事だから当たり前だし、インサイダーの俺の言葉じゃ贔屓目に聞こえるかもしれないが、やっぱり奴等は大したもんだ。

そんな姿を目の当たりにした夜。
家族と手作り餃子と黒ラベルした後、ふと思ってる。
どんなスポーツでも「裾野を広げて三角形の頂点を高くする」と、普及と強化の関係を語っているけど、野球やサッカーでは明らかに小学生辺りを対象とした普及で、テニスではそこが明確でない気が凄いする。

自分達が愛して信じているスポーツを多くの人達に楽しんでほしいと考えるのは正しい。
でも最後に大事なモノは数じゃあない。
今度汗をしたたらせてレッスンから戻って来たあいつらに、ちょっとイジワルな質問をしてみよう。
それまで質問内容は秘密。

2010.7.25
Tenjincho
カテゴリー:Tennis
07/25 23:18
09

Scene 287 [Maggie's Farm]

夕刊一面のカラー写真を見て瞬間的に、(ウソだろ?そんな訳ない!)と記事を読み、ウソじゃなかった事にガッカリした。
ウルグアイvsガーナ戦。
ゴール前でのハンドの決定的写真。
ハンドした選手はゴールキーパーが両手でしっかりセーブする様にボールを止めている。
それだけでなくもう一人の選手もPKに飛びつくキーパーの様に左手を高く差し出している。
まるでゴールキーパーが二人並んでプレーしていたみたいだ。
サッカーは遊びでしかやった事がないから、サッカー界故のダーティーな部分は全く知らない。
テニスの練習試合で、ボールを拾いに行く時間を省く為に明らかにアウトのボールをノーバウンドで「アウト!」と止める事があるが、それを公式試合のセルフジャッジで
明らかに入っているボールをノーバウンドで「アウト!」と止める感じなのか。
勿論それは失点になるが、それどころの酷さじゃやない気がする。
「ワールドカップ史上最高のセーブだと思う。退場する価値はあった」
寅さんだったら、「それを言っちゃあ、おしめえよ」と言ったことだろう。
まあ、これを差し引いても十分楽しませてもらっているのだが。

ウィンブルドンは開幕から微妙な揺れを見せながら終盤に入って行った。
オープニングの錦織圭選手とラファエル・ナダル選手の対決。
フレンチの時のクルム伊達公子選手とディナラ・サフィーナ選手の時の様な確信はなかったものの、ドローを見た時に(おおっ!もしかしたらやってくれるんじゃ……)と感じさせてくれた錦織選手の華。
やはり(やってくれそうだな)と感じさせていたノバク・ジョコビッチ選手の敗退と、ナダル選手の磐石さを演出してしまったアンディ・マレー選手の敗退。
見る角度で変わるいろんなコントラストがいろんな想いを生む。
マスコミは又勝手に、「フェデラー時代の終り」だの「ナダル時代の到来」だの、相変わらずテメエらの文責なしの無様なエレベーター現象。
2年前に同じ事を書き立てられた二人は気にもしないだろうが、“大衆”は見事にこの煽りに乗っちまうんだろう。

アメリカのニューポートって知ってるかな。
ロック・ファンならすぐに、「あ?、ニューポート・フォーク・フェスティバルね」という場所。
1975年の7月25日、ボブ・ディランがアコースティックギターでなく初めてエレキギターを抱えてステージに立ち、“マギーのところじゃもう働くもんか!”とフェンダーのストラトをかき鳴らして、「本当のロックが生まれた」と言われたイベントの開催場所。
そこでウィンブルドンが閉幕した翌日から始まった「Cambell’s Hall of Fame Tennis Championships」。
全米オープンの前身である大会らしく、サーフェスは芝。
1回戦で添田豪選手が第8シードのテーラー・デント選手にフルセットで勝利。
2回戦で惜しくも敗退してしまったが、何かとてもワクワクさせられた。

さっ、もうすぐ梅雨明けだ。

2010.7.10
Chofu
カテゴリー:Dylan
07/10 23:25
10

Scene 286 [Ragged Glory]

「玄関の門開けて壁打ちしていい?!」
良くわからないが"いいよ"と適当に返事。
最近は学校から帰って来ると家の塀で壁打ちしているらしい。
先日は2時間打ってたと家人が言ってた。
しばらくしたら"ドン"、"ドン"、"ドン"と家の外壁に何かぶつかる音。
もしや?と外に出てみたら案の定家の壁で壁打ちしてやがった。
「だってお兄ちゃんもやってるよ」
道路の幅の塀での壁打ちに飽き足らず、門を開けて壁を外壁にして距離を伸ばしてたって訳だ。
延々壁が続く豪邸でも、金がかかった鉄筋の家でもなく、木と紙で出来た安普請の家だ。
可愛い奴等とは思いつつも、ボールをスポンジボールに変えて塀で打たせる事にした。

翌朝ウィンブルドン初日の中継を明け方迄観て新聞を取りに出たら、バックパックにバットを突っ込んっだ小学生数人が、市営グラウンドの方へ急いで自転車を漕いで行く。
それに合流する様に坂の上から、右の道からとその仲間達が自転車で走って来るのが見える。
時間は5時半前。
毎朝彼等が朝練していて、登校時間のちょっと前に慌てて家に戻って来るのは良く見てた。
その朝練が5時半からだったとは知らなかった。
毎朝見てるコーチには本当に頭が下がる。
そして毎朝送り出すご家族にも。

"好きこそものの上手なれ"とは良く言ったものだ。
許せる限りの時間を自分が強くなる為、より良いものを作る為に注ぎ込む姿勢は、子供だろうが大人だろうがカッコいい。
行けるところ迄行くことだぜ。
真っ平らな処から小高い丘に登った時の視界の拡がり、更に険しい山を登った時の視界の開け。
そうやって得た価値観、そこで背負った責任感は、その場の達成感だけでなく、裏打ちされた自信と気のおけない素敵な仲間をもたらす。

"仕事をしながら歌うのはいい、それは労働に感激を与える。
だが歌うことを仕事とするな、靴の底が鉛のように重くなる"

この諺を読んで、10代後半でトップに登り詰めバーンアウトしたアスリートを思い浮かべる人もいるだろう。
あんなに好きだったテニスが単なる喰う手段になっている自分自身に気付いて、愕然としている人もいるかもしれない。

テニスコーチなら一回は、「いいね、好きなテニスが仕事で」と言われたり、何かで弱音を吐けば、「好きな事を仕事にしているんだからそれ位のこと当たり前だよ」と叱咤されたことがあるはずだ。
どっちもその通りで、正しくそれがテニスで生きて行くということだ。
おそらく、"好きなテニスを仕事にしたことで靴の底が鉛のように重くなる"のは、許せる限りの時間をテニスコートで過ごせなくなった者で、そういう奴等は無理せず他の道を行けばいい。
俺の周りのイカした連中は、目一杯テニスして「"仕事をしながらテニスするのはいい、
それは労働に感激を与える。だがテニスを仕事とするな、靴の底が鉛のように重くなる"だってよ!全くだ!」
って軽口叩いて、又コートに出て行くよ。

今いる場所を平坦と感じるのも、ちょっとした丘と感じるのも、断崖絶壁と感じるのも、そしてそれらの場所を物足りないと感じるのも、ツライと感じるのも全てテメエの生き様次第だ。

2010.6.21
Country Home
カテゴリー:Tennis
06/25 11:00
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