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another side of tennis

[Another Side of Tennis] 坂東海

新宿ゴールデン街バーの片隅のテニスと音楽の与太話です。
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01

Scene 301 [好きな時に跳べ!]

全豪オープン男子準決勝後の共同通信社の記事。

"28歳の小柄な戦士の原点は17歳の時にある。やる気のなさからピレス・コーチに、しばしば練習場のボール置き場に鍵をかけて閉じ込められた。一度はやめると決めて工事現場で働いたが、テニスでプロを目指せることの幸せに気付き、厳しい練習に真剣に取り組み始めた。"

いいなあ、フェレール。
"現場"で働く位だからWorking Classの育ちなんだろう。
身長は175cmでそうデカくなく、今大会128ドロー中6番目。
記事の最後は「僕のプレーは体力勝負。集中して戦い続けるだけだ」という言葉で締めくくられていた。
"好きこそものの上手なれ"だな。

数年前、旧知のバンドマンに電話をかけた時のこと。
「俺今現場で行けないなあ」とボーカル。
(収録かなあ)と太鼓の奴にかけたら、そいつも「新潟の現場だからさあ」。
docomoの初代タイアップをしてた奴等だが、徐々にジリ貧気味になっていたので、「新潟」と聞いてやっとわかった。
音楽だけじゃ喰って行けなくて、"現場"に出ていたんだ。
今奴等のバンドは休止状態。
それでもそれぞれが小さな小屋を廻ってプレーを続けてる。
"現場"で稼いだ金でスタジオに入って、イカした服買ってね。
やっぱり"好きこそものの上手なれ"だ。

小学校入学当初から何かと落ち着きがなく、自分から努力する事が出来なかったガキがテニスを真面目にやりたいと言い出したのは一昨年の夏。
先輩がやってるジュニア育成スクールに放り込んだ。
担当はバイト時代の後輩コーチ。
奴がダラければ俺が見てても遠慮なく厳しく指導してくれた。
おかげ様で"強くなる楽しさ"に目覚め、「テニス部のある学校に行く」と受験勉強を始めた。
そう、やっぱり"好きこそものの上手なれ"。
余談だがあの厳しさがなければ、あの甘っちょろいガキがこんな短期間に上達し、進路をテニス部のあるないに拘る迄には至らなかったはずだ。

母校の顧問先生が受験について「トライさせてあげてよ。受かる受からないじゃなくて
テニス部の皆みたいにバネがある人間になるから」と言っていたのを思い出す。
バネって言ってもぴょんぴょん飛ぶイメージでなく、
上手く行かなかったり、悔しい事をバネにするってこと。

とは言え大人になると、"好きこそものの上手なれ"もなかなかムツカシイ。
でも錆びたバネでも踏みつけられた分だけ、「好きな時に跳べ!」だ。
カテゴリー:SION
02/10 23:39
02

Scene 300 [Flashpoint]

「いつでもどこでも」と便利な世の中になったが、隙間という隙間を埋め尽くして、ただただタイトになっただけの様な気がする。
実際今俺は電車で移動しながら、iPhoneのメモ帳にせっせとこれを打ち込んでいる。
「昔は良かったですねえ」
「でも親父達も昔は良かったって言ってましたよねえ」
志村けん一座の人情コントでの台詞。

「〜でなければいけない」という固定観念、「〜しなければいけない」という強迫観念。
そんなものに頭の中から指先まで支配されてちゃ動くに動けない。
それに「どうせ〜」という諦めと「俺ばかり〜」という被害者意識が加わった日には救い様がない。
本能、直感を信じられなくなった時、人は瞬間的な判断力を失っちまうんだろう。
本能、直感で動けなくなった時、人は取り残され、列の最後に力なく並ぶんだろう。

「昔は良かった」とは言わないが、もう少しクッションがあってもいいんじゃないか?
スケジュールがタイトな時 、わざと全体を見ないで目の前の事だけに没頭する事がある。
アイデアのかけらが水面に顔をのぞかせるのをただ待つ時がある。
LimiterをかけつつFlashpointを探す。
見て見ぬ振りをした挙句のいいとこ取り?
いや、わがままでだらしない男が生きて行く上での本能としておこう。

最近余り聞かなくなったのが、「日本人はスポーツで世界レベルで成功するには身体が小さすぎる」。
そう言われ続けていた時、日本人以外では身体が小さくてもトップレベルの選手は沢山いた。
皆目に見えるわかりやすい事でしか判断しないって事だ。

日本選手の試合を観ていると(思い詰め過ぎてるんじゃないか)と感じたり、余りに浮かれて煽りまくり、更に選手を追い詰める周囲が目立つ事が多い。
その辺りを錦織圭選手はあっさりクリアしてくれそうな気がする。
そして彼ばかりに皆がフォーカスしている間に、ちゃくちゃくとNew Ballsもタフになっている気がする。

Flashpoint。
Ignitionを廻してエンジン全開Start Me Upするきっかけはどこだ!?
カテゴリー:Tennis
01/25 17:32
03

Scene 299 [Coming Soon!!]

もう10年以上前の話。
沢山の方がレッスンに通ってくれていて、節目節目のイベントレッスンもキャンセル待ちが当たり前で沢山の方が参加してくれていた。
1997年の暮れだったかな。
年末年始のイベントレッスンをどうしようかというミーティング。
それまで年末年始は大晦日と元旦は貸しコートのみでイベントレッスンはなかった。
僕の口から出た言葉は「大晦日にイベントレッスンやりましょう!」
マネージャーは「それ待っていたんです!」とニヤリ。
しばらくしたら電話がガンガン鳴った。
「マジですか〜!大晦日と元旦位は休みたかった……」
一番サボリ癖がある奴が始めてしまったからか、他校も幾つか追随したらしい。
翌年、全校が大晦日にイベントレッスン実施となっていた。
僕達は更に元旦もイベントレッスンを実施した。
「追加公演!Coming Soon!!」
サボリ癖はあるが、誰もやってない事をやるのは好きなんだな。
当然その翌年の年末年始は全校が全日イベントレッスンを実施した。

始めて元旦にレッスンした日。
一緒にFightしてくれたコーチ達と「せっかくだから乾杯くらいはしよう」とビールが呑める店を探して武蔵小杉の街を歩いた。
まだ正月営業している店なんて殆どない時代。
おまけに夕方に届かない中途半端な時間。
駅前の喫茶店での乾杯と、その後の元旦らしくないシビアな仕事トーク。
忘れられない。
ありがとう。
楽しかったよ。

「あそこから手振ってくんねえかなあ。お前メールしてみろよ!」
「わかりました!」
「ちょっと待って下さ〜い。窓越しに顔出せるかメールしてみます!」
「電話してみればいいじゃん!」
今年のスタッフ初詣の帰り。
北参道から西新宿の行きつけの寿司屋へ歩いて向かう途中。
大の大人が10人。
ビルの8階を見上げている。
「あっ!いたいた!おおっ!手振ってるよ!」
手を振り返す奴、拳を突き上げる奴。
8階から手を振ってる奴が膝から崩れ落ちたのがわかる。
「あ〜あ、しようがねえなあ。泣いちゃったよ」
そう言ってる僕達の目にも涙が滲んでいるんだが。
高層ビルの街での、ちょっとしたセンチメンタルなドラマってやつ。

年末年始。
「Coming Soon!!」が良く似合う。
いきなりでもちょっとづつでもいい。
次の楽しいハプニングはいつだ?!
カテゴリー:Tennis
01/10 10:06
04

Scene 298 [Livin’ in The Future]

クリスマスの朝。
少3の娘は「わあっ!サンタさんからプレゼント来てた!」
小6の息子は去年妹に「サンタなんていないよ」と言い放ちこっぴどく叱られ、何とか妹がサンタを信じれるところまでフォローした経験からか、小さい声で「ここにヨドバシカメラって入っているよ」と家人に囁いている。

iTunesのスマートプレイリストで、「再生回数が0である」という設定をして、一度も聴いた事がない曲をクリスマス・イヴから聴き出した。
一度も聴いた事がないって言っても、iTunesに放り込んでからMacやiPodで一度も聴いていないって事だから、レコードからCDに買い直した曲とか全部好きな曲。
MacBook ProのiTunesには全部で6,772曲入ってる。
そのうち1,084曲が“Never Played”。
ラジオからいきなり好きな曲が流れて来た様な楽しさだ。
今流行の自分へのクリスマス・プレゼントって事にしとくか。

久々というかやっと聴いたのがスプリングスティーンの2007年のアルバム“Magic”。
去年の“Working On A Dream”は聴いてるのにな。
その中の“Livin’ in The Future”。

Don't worry, darlin'
No baby, don't you fret
We're livin' in the future

“ダーリン、心配はいらないぜ。俺達は未来に生きているんだ”
と歌う、“Glory Days”や“Tenth Avenue Freeze-Out”の様な陽気なミディアムのロックンロール。

でもサビは更にこう続く。
And none of this has happened yet

“これはまだ起きてない事なんだよ”
歌詞カードを眺めて見ると、どの曲もブルーでヘヴィーな言葉が連なっている。

改めて感じる。
自分から力強く声を出して行かなきゃ、この街じゃ生き残れないんだと。
多少無理があっても笑顔でいなきゃいけないんだと。
自分だけのBluesを明るく笑い飛ばすWork Songを口ずさむんだ。

“ダーリン、心配はいらないぜ。俺達は未来に生きているんだ。これはまだ起きてない事なんだよ”

2011年の錦織圭選手のコーチに“Winning Ugly”のブラッド・ギルバード氏がつく事が決まった。
そう、タフにね、エネルギッシュにね。
ガツンと行かないとさ、2011年は。

Merry Xmas 2010 & Happy New Year 2011
カテゴリー:Music
12/25 14:21
05

Scene 297 [だいじょうぶマイ・フレンド]

昔から良く「いっつも大丈夫!って言うけど、何が大丈夫な訳?」と言われてる。
それには「だから大丈夫だから大丈夫なの!」と返して来た。

TVをつければどこもカラ元気で内輪ノリのギャグマン。
彼等から明るいエネルギーをもらうのはなかなかムツカシイ。
辟易してニュース番組にすればブルーな気分になる出来事の紙芝居。
おまけにそれを語る奴等の口は明らかに背後の連中の論調で、醜い誘導が透けて見える。

表に出ても美味しいものを気兼ねなく喰える程の金はなく、
そんな俺みたいな奴が溢れた街はディスカウントの赤札で埋め尽くされてる。
やっと辿り着いた学校や職場。
そこも随分前からなかなかムツカシイ場所になってる。

「大丈夫!」ってつぶやき、奥歯を噛み締める時がある。
「大丈夫かな……」じゃ不安が腹の中から輪を拡げるんだ。

好きな奴がいる所に行こう。
好きな奴等が集まる場所に行こう。
約200坪のテニスコート、2坪あるかないかのバー。
俺は無意識にいつもそこに足を向ける。

この10日間、毎朝iPodを1983年のナンバーで廻し出す。
広田玲央名の「だいじょうぶマイ・フレンド」
俺は本気だ。
大丈夫。
大丈夫だから大丈夫。
カテゴリー:word
12/10 23:30
06

Scene 296 [パブリックイメージ]

家から歩いてちょっとのスポーツセンター。
ひび割れたハードコートとゴルフの打ちっ放しにバッティングセンター。
一年に数回打ちっ放しに行く位で、今日がその数回のうちの1回。
期待せずに打ち始めたら結構調子いい。
(トップの位置をもう少し高くしたらいいかな?)なんて思いついて、やって見たら何かいい感じ。
そこへ向こうから歩いて来る女性と目が合った。
一昨年の暮れにここで会って以来で、最近のスコアと世間話。
「テニスあれだけ出来るんだから大丈夫でしょう?!」
そう、この方は学生時代にアルバイトコーチをしていた時のお客さん。
話の合間に何気なく一球打ったら、
「あ〜スライスねえ。しちゃうのよね。テニスもスライス上手かったもんね」
はい、お後がよろしいようで……。

先週のニュースの中に「テニスインストラクターを酒気帯び容疑で逮捕」ってのがあった。
この事件の詳細とこのコーチの事は置いて於いて、マスコミにとってテニスコーチってのはどういうカテゴリに入るんだろう?
「テニスコーチともあろう者がこんな事をして」なのか、それとも「やっぱりテニスコーチはこんな事をしでかす」なのか。
いずれにせよ見出しに職種が出るんだから、社会の中での自分達の立ち位置はわかる。

打ちっ放しの後、何だかんだで動き回っていたら夜8時。
近所の餃子の美味い店に家族と入って生ビール。
後ろのテーブルでは50〜60才のグループが紹興酒の燗で盛り上がっている。
初めてオーダーしてみた「辛しめん」が大ヒット。
調子に乗って生ビールをもう一杯行こうとしたら、後ろのテーブルから「オープンスタンスが〜」という声。
(うん?)と聞き耳をたてるとやっぱり皆テニス仲間っぽい。
(公園のコートでプレーした帰りだな)と納得してたら、「◯◯コーチがね、〜で」とコーチの話が始まった。
良く考えたらここはさっきのスポーツセンターの側。
幸い名前を出されていたコーチの評判は悪くなかった。

帰宅後予想外の雨が降って来た。
(明日の朝イチのコート大丈夫かな)と心配になるのと同時に、指がiPhoneのタッチパネルを滑り出し明日の出席人数をチェック。
チェックと同時にレッスンプランが膨らみ出す。
明日は早く行って吸水ローラーとスポンジをフル稼働しなきゃだから寝るか。
カテゴリー:Tennis
11/25 23:47
07

Scene 295 [俺の声]

今年の東レPPO。
スキアボーネとの準決勝。
デメンティエワのパフォーマンスは素晴らしかった。
突如の引退。
スキアボーネに勝利した後にサインをもらった娘は心底驚いていた。

ジャパン・オープン準決勝。
ナダルとトロイツキの闘いも素晴らしかった。
「本当はナダル負けてたよね?!」なんて声も聞こえる。
トロイツキはその数週間後にツアー初優勝を遂げた。

バリでクルム伊達公子はイバノビッチに敗退。
大阪でのタナスガーン戦に続きフルセットでの敗退。
でも彼女は今40才にして世界46位で日本女子最高位。
シャラポア、サフィーナ、ハンチュコバ、今年破ったビッグネーム多数。
でも彼女はそれで満足してないし、誰もそう思ってない。

全日本選手権女子決勝。
米村知子は3回目の挑戦で又しても涙を呑んだ。
「3度目の正直という思いで決勝に挑んだが、私の夢を叶える事が出来ませんでした」
「思い」と「想い」。
「3度目の正直という」に続く「おもい」に、どちらが合っているんだろうと暫し悩む。

そして俺は1986年から聴き続けてる曲を頭で鳴らす。
SIONの"俺の声"

"色褪せても笑うヒーロー達の写真は 栄光と挫折を一度に晒してしまう いらつかせる夜が 今日も眠らせちゃくれない 闇の中を俺は 睨みつけるしかない"

今夜も沁みる。
サビは、

"俺は王様だと思ってた 俺の声で誰でも踊ると思ってた だがしかし 俺の叫ぶ声は ピンボールさ はねてるだけ"

報われない悔しさ、虚しさ。
それを越える為に今がある。
カテゴリー:Tennis
11/10 11:46
08

Scene 294 [Good Audience #2]

目の前2mのところに石川遼がいる。
最終ホールの第2打。
ラフに入ったボールを「道が見える」と一言発し、グリーンに向かって打った。
どんな擬似音も当てはまらない物凄い打球音がした。
TV収録用のマイクがその音を拾って、スピーカーがハウったのかと思った位だ。
しばらくして、藤子不二雄Aはプロゴルファー猿の打球音でこんな音を表現したかったのかなあと、どうでもいい事すら頭に浮かんだ。
石川遼がグリーンに向かって歩き出すと、近くの人達がターフが取れた跡を撫でてる。
大相撲で引き上げてくる勝った力士の背中を叩く客の様だ。

この日は完全クローズドの9ホールのみのイベント。
参加プロは石川遼、丸山茂樹、藤田寛之、宮本勝昌の4名。
招待客は約2,500人でこれは通常の大会の1/4以下らしい。
若干遅れて着くと既にスタートしていて、MCがいて遠くからアナウンスや歓声が聞こえる。
ゴルフ通の知人の言うがままに4番のティーインググラウンドへ。
暫くするとスピーカーを積んだカートが滑り込んで来て、俺等の真横を石川遼が通って行った。
「顔ちっちぇえ!」
TV縦横比現象なのか、初めて生で見た彼は本当に顔が小さくてスリムだった。
そしてそのホールはドラコン獲得。
そこで気付く。
殆どミスをしないでフェアウェイを歩いて行く選手達にずっとついて行くのは無理だ。
隣のミドルのグリーンで待っていたらあっと言う間にやって来て、ティーショットを放ち、こっちに向かってズンズンやって来る。
そんなこんなで冒頭のシーン。
ゴルフ通2人の読みで、この辺が第2打だろうって所に陣取っていたら、来た。
しかも石川遼のボールがフェアウェイを外れて、正しく俺等の足元に。

すんげェものを観ちゃったなとしか言えない。
然程ゴルフを知らない俺でも、世界を相手に戦うプロってのはこうなんだなと納得した。

観戦中の彼等との距離感は田園クラブで観たジャパンオープンみたいだった。
今でも覚えてる。
あのクラブハウスの前で試合を観ながら談笑しているオランテスが気軽にサインくれたり、九鬼さんが皆が書き込んでくれた色紙を見て、「俺真ん中でいいのかなあ」とペンを走らせてくれたのを。
あの時の俺は中2。
楽しかった。
もっと強くなりたい!とポジティヴに感じた。
ゴルフ観戦も子供達にそんな想いを抱かせるんだろう。

「国技館の焼き鳥って美味いんだからさ」と子供を相撲観戦に連れ出すシンガーの話を聞いた事がある。
俺達もテニスキッズの手を引っ張って有明に行こうや。
カテゴリー:Tennis
10/25 15:10
09

Scene 293 [Good Audience]

ナダルが有明のセンターコートに姿を現した。
数分前に圭が負けてしまった喪失感を補って余りある歓声と熱気。
これが世界一ってやつか。

駅を降りてコロシアムブリッジを渡っていると、コート側の階段に人が鈴なりになっている。
つられて観てみると、真ん中のコートで圭、その隣でナダルが練習していた。
コロシアムではロディックvs伊藤竜馬の1stセット中。
それなのに練習コート周辺は幾重もの人垣。
照明台座、水飲み場、ゴミ箱、登れるものには必ず誰かが登って、ナダルとナダル越しに圭を見つめている。
そこで鉢合わせたジュニア強化コーチは、「凄い音させてますよねえ」とナダルにため息。

そんな後のナダル登場。
右隣には「ナダルが観たい」と学校を早退して来た長男。
左隣のプロテニスコーチは、試合開始直前に息を切らせながら席に戻って来た。
「豪とモンフィスをちょっとだけでも観ておきたくて」
「どうだった?」
「結構いい感じでしたよ」
このやり取りを聞いていた長男が、「ちょっとしたら観に行こうよ」と来た。
ナダルが観たくて、正しくナダルが目の前で試合を始めようって時に大したもんだ。
とは言え、1stが5-2ナダルになったところで、どうしても気になって1番コートへ。

ナダルが初めて日本で試合をしている最中だというのに、物凄い観客の数。
デ杯監督、フェド杯監督をはじめ主だった強化コーチが連なり、試合中でない日本選手も殆どいる様に見受けられる。
1stはタイブレーク10-8でモンフィスで2ndは1-1。
練習コートで合ったコーチが寄って来て試合状況を教えてくれた。
「セットポイントがあったんですけどねえ。ちょっと待っちゃって取られちゃったんですよ。
その次のポイントがアグレッシヴに行って獲っただけに惜しかったですよ」
モンフィスはかなり辛そうだった。
フェンスに手をかけうつむき、まるで宿酔いの様に落ち着きなく動いてる。
彼のイメージからか、ドレッドに巻いた白くぶっといヘアバンドがでかいヘッドフォンに見間違える。
2 ndも添田選手に何回もいい波が来る。
応援者からは学生テニスの様なかけ声がかかる。
モンフィスはスライスでしこってる。
あの長い手足でしこりに徹しているんだから、そりゃあ良く返す。
そしてしっかりボールの後ろに入った時だけは、呆れるな速さとコースでエースを奪う。
そんなモンフィスを崩しきれず5-4になったが、まだ添田選手にも分があると誰もが感じ応援してる。
目の前にいる岩渕プロが「まだ行けるぞ!ここだ!ここ!」と声をかけた。
結局、2ndは6-4。
試合が終ってベンチに戻った両者は暫く動かない。
モンフィスは肩で息をしてうつむき、添田選手は唇を噛み締め一点を見つめたまま。
添田選手がコートを出る時思わず「ナイスゲーム!」と声をかけた。

「楽しいだろ?!早いラウンド観に来るのって」
押しつぶされながらガスケのサインをGetしたガキは嬉しそう。
予選を観に来て、しこたまサインをもらった友人の子供の話をすると、「え〜いいなあ、今度は予選から来たい。嵐のサインよりプロテニス選手のサインの方が価値あるよね!」
う〜む、嵐のサインとの比較はムツカシイ……。
まっ、こういうのはビッグテニストーナメントならではの楽しみ方だ。
コンサート、プロ野球じゃなかなかこうは行かない。

さっ、次はいつ行く?有明へ!
カテゴリー:Tennis
10/10 15:01
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Scene 292 [毎日がテニスの日]

「男の子、男性は手を叩いて下さ?い!」
「次は女の子、女性は手を叩いて下さ?い!」
「じゃあ今度は学年別に行こうかな。まずは1年生!」

体育館に集まった児童とその家族を前にシンガーは、“リサーチ”から講演ライヴをスタートさせた。
その後はバイオリンでJRの踏切の音、次に小田急線の踏切の音、更には会場沿線の西武線の踏切の音を再現してみせて、会場に感嘆と親近感を覚えさせ、演奏に入って行った。
シンガーの名前は“増田太郎”。
20歳で失明したというプロフィールを臆せず、デフォルメもせず、エンターテイメントする姿に、今更ながら(人ってのはコミュニケーションが大事で、それが自分が好きな事、得意な事で出来るのは素晴らしい事なんだな)と改めて気付かされる。

オーラス前、「エッセイにもつけたタイトル」と“毎日が歌ってる”という曲が始まった。
(“毎日歌ってる”じゃなくて“毎日が歌ってる”なんだ)と、[が]が入らないその訳や、そう表現したい彼の感性に想いを馳せて聴き入る。
“やれるんだ 出来るんだ 今の自分でも こんな自分じゃ 何一つ 出来ないと思ってた 描いてた未来とは少し違うけど あの頃より確かに僕の毎日が歌ってる”
そんな歌詞を青臭く感じず聴いてる自分にちょっと驚いていると、一昨日の豪雨の有明でのワンシーンを思い出した。

一昨日、9月23日はテニスの日
この日を中心に趣向を凝らしたイベントが日本各地で行われている。
“聖地”有明テニスの森はそのメイン会場として、テニス界のいろんなポジションの人達がボランティアとして駆けつけ、テニスへの感謝の気持ちを込め、様々なイベントを行う。
スタッフの為に用意される弁当の数は約300個。

前日仕込みをしたスタッフが当日も早出で、7時前からどんより曇った空の下で設営を開始。
僅かに用意されている当日受付分を目指すテニスフリークも既にチラホラ。
大半のスタッフも集合時間よりかなり早く集まって来ている。
「何とか午前中、ボレーボレー迄は出来そうだね」
「始まっちゃえば何とかなるよ」
でも、不安を打ち消そうとそんな言葉を掛け合い、会場を作り上げて行くスタッフ達の上に雨が落ちて来た。
最初は「大丈夫!大丈夫!」と言っていられたが、雨粒は見る見るうちに大きくなり、ハードコートは水浸し。
「砂入り人工芝はまだ行ける」と言ってるうちに更に雨脚は強くなり、無情の中止。
それでも集まってくれた数百人の人達の為に何とかしようと、各メーカーはお土産を用意し、翌日から予選開始の東レPPOはコロシアムでの選手の練習を数時間見学可としてくれる等粋なはからいを見せてくれた。
そしてコーチ達は雨が止んだ隙をついて、何とかプレーが出来そうな砂入り人工芝コートに飛び出して行ってワンポイントレッスン開始。
それなのに又雨。
それもいきなりバケツをひっくり返した様な雨、“Buckets Of Rain”。
“やらなきゃいけないことをやるだけだよ。だからうまく行くんだ”
(Buckets Of RainBob Dylan)
あの激しい雨の中、コートから出てくる人達の顔は皆笑顔だった。

撤収作業が終り、学生ボランティアへテニスの日実行委員長が挨拶。
感謝の言葉の合間に彼はこう言った。
「我々テニス界で生きる者にとっては毎日がテニスの日だ」
同じ場にいたプロテニスコーチ達は皆頷き、気持ちが通じ合っているのが良くわかった。
常にテニスを愛し、広めたいという気持ちが学生達に伝わっただろうか。

学校ライヴのシンガーも、単に子供ウケを狙う事は出来たんだろう。
でもショートカットの言葉や振る舞いは心には残らない。
その時届かなくても、心の片隅に残っていた言葉を噛み締める夜は無数にある。
誰かに、何かに、真摯に向き合う時が来た時に、フラッシュバックする言葉、想いは俺等の心の扉の中にあるんだぜ。

2010年9月23日、有明にいた全てのテニスフリークに感謝します。

カテゴリー:Dylan
09/25 23:59
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