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another side of tennis

[Another Side of Tennis] 坂東海

新宿ゴールデン街バーの片隅のテニスと音楽の与太話です。
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01

Scene 259 [すべてはALRIGHT]

“新宿の片隅から”のエンディング。
激しくかき鳴らされるギターにかぶってシオンがこう唄った。

“昨日は車の中で寝た あの娘と手をつないで”

“昨日は”だけで悲鳴にも似た歓声があがり、俺も涙が滲んだ。
シオンは客に、そして天を見上げて「ありがとう」と言ってステージを降りた。

数日後家人を久々に職場迄送って行った帰りにふと思い出す。
(あっ、多摩蘭坂!)
家人の職場は“多摩蘭坂を登り切る手前”じゃなくて、多摩蘭坂を登り切った信号二つ先。
RC命って訳じゃない俺は奴と付き合いだして随分たったある日、「あれっ-!ここ多摩蘭坂じゃん!」って驚いて車を降りて、石垣に書いてあるRCフリークの“落書き”を眺めたんだ。

次の日、テニス界でお世話になっている方のお父様の告別式。
訃報を見た時沈痛な気持ちになりながらも気付いた。
(ここ昨日清志郎の密葬やった場所だ……)
予想外降り続いた雨が朝の雷雨で途切れた晴れ間。
行人坂から目黒川を太鼓橋で渡り、山手通りを越えた辺り。
祈りを捧げ、重い気分で駅に向かって歩き出してから踵を返した。
式場の敷地の隅っこから、チャボがハミングバードを掲げてた辺りに向かって手を合わした。

その夜又降り出した雨の中、真っ直ぐ帰れずに足はゴールデン街に。
俺が「今日お世話になってる方のお父さんの告別式でさ、その会場が-」と言いだすのと、マスターがCDをPLAYにするのがジャストだった。
流れて来たのは清志郎の“Boys”。
“Memphis”が出た後のブッカーT&MG’sとの武道館を2階最後列で大勢でベロベロになりながら観た時の様子がフラッシュバックする。
そう言えばSOLD OUTの野音を塀をよじ登って観たなあ。
“ミラクル”の時で、昼間にボ・ガンボスの代々木公園でのフリー・コンサートを観た後、大挙して急遽野音に行った。
開演から大分たっていたけど、よじ登ってすぐに始まった“いい事ばかりはありゃしない”は最高だった。

「このCD貸したまま返って来ないんだよなあ」「こんないいアルバム返って来ないよ」

本当に一杯だけで帰ろうと考えていたんだが、最後の“MTN”迄聞いて席を立った。
帰ったら家族はまだ起きてて賑やか。
風呂につかってノンビリしてたら、「あ-っ!」という家人の声が聞こえて、娘が半べそをかいて「ごめんなさい」と謝りに来た。
小さなプラスティックのサーブ練習機で素振りをしてたらすっぽ抜け、液晶TVにぶつかり、液晶は「パリン」と音をたてて、下半分が黒地に奇麗なレインボーカラーの格子模様に姿を変えたらしい。
翌朝メーカーに電話すると「そうですねえ、一番高い部品ですから14万5千円位かかっちゃいますね。買った方が安いかと」。

“金が欲しくて働いて 眠るだけ”
頭の中で清志郎が、「しょうがないじゃん」と笑ってた。

2009.5.10
Tamaranzaka
カテゴリー:SION
05/10 12:49
02

Scene 258 [I’m Innocent]

WBCでイチロー選手が不調だった時のマスコミの論調、世論を見てて、フランスW杯でのカズ選手を思い出した。
あの時カズ選手は代表落ちとなって、今回イチロー選手は最終戦でタイムリー。
結果は違うが、結果が出るまでのスケープゴート的扱いは同じだった。
これが“語れる自分はなくて他人の話しか出来ない”凡人の世界か。

イチロー選手は胃潰瘍での開幕から欠場後の自身開幕での張本勲氏の持つ日本タイ記録に並ぶ3085安打達成。
そして翌日の3086安打の日本新記録達成。
WBCでのカメラに向かって来るかの様なセンター前のタイムリー、3085安打となった満塁ホームラン。
華を感じた。
シアトルまで記録達成を見届けに来た張本氏を気遣っての、「場所が違うから」というコメントも良かった。
日本で1278本、メジャーで1807本。
誰だって本当は「場所が違うから」凄いのはわかってる。

毎日カレーを食べる事から始まって、イチロー選手は勝敗、好不調に関係なくルーチンを守って自分の心と体を管理している事で有名だ。
4/17の読売新聞にはこんな記事があった。
“2006年にチームメートになった城島が驚いたのは、「準備のすごさ」だ。決まった手順で調整、試合開始の瞬間にトップギアで疾走する背番号「51」を見て、「自分はあんな準備が出来ているか?イチローさんが相手なら抑えられるか?」と自問自答して来た。さらに遠征先のレストランもほとんど決まっていて、注文するメニューまでも同じことが多いという。森本さん(※イチロー選手のトレーナー)は「何人もの選手がイチロー君の行動をまねたけど、挫折した。彼の生活自体がベースボールなんです」と証言する”
下北のピーチだったか、そいつの部屋だったか、「キースの音ってさ、キースしか出せないんだよ」、ボソッと言ったバンドマンがいた。
運指的には簡単だからハードロック好きのギター小僧はなめてかかるが、そんな頭でっかちな奴には奴の言った意味がわからないだろうな。
奴は高校の頃は毎朝“Little T&A”を聴いてから学校に行ってたキース・フリーク。
まず音をコピーしてもキースの音は出ない。
「じゃあ同じ生活をしなきゃ」と酒飲んで、あれやこれやとして……やっぱり出ない。
そこで「キースの音ってさ、キースしか出せないんだよ」、だ。
でも奴はキースと同化して自分の“オリジナル”のスタイルを確立した。
「好きなんだからパクったっていいじゃん」
ポール・マッカートニーの言葉。
ポールは余り好きじゃないけど、これを聞いた時は(何だよ、結構いい奴かもな)って思った。
TVに映るイチロー選手をただ真似てもそれは草野球の余興でしかない。
見えるところだけを真似したり、見えるところだけで判断する。
でもそれじゃ真実は何も見えていない。
大切なのは情熱だ。

テニス界のルーチン魔?と言えばラファエル・ナダル選手。
ゲーム開始前のベンチまでのダッシュは最高だ。
ペットボトルを並べる仕草は微笑ましい。
サーブを打つ前のルーチンは正しくイチロー選手の様だ。
そしてナダル選手もとんでもない努力をしてるんだろうなと思わせる。

“I’m Innocent”
キース・リチャーズのピックにはそう書かれている。
「俺は無実だ」
ドラッグでの再三の逮捕にひっかけてのジョークにもとれるが、音楽に真摯に向かい合ってる姿を連想させる。
俺の、あんたの“I’m Innocent”は何だ?

2009.4.23
nishiogikubo-north
カテゴリー:STONES
04/25 11:54
03

Scene 257 [How to be a good tennis parents]

「“困難が立ちはだかった時に、それを解決する為には自分から行動する事が大事なんだ”と必ず気付いてくれますよ。声をかけることよりも心をかけることが大事なんですよね」
話をしてる女の先生の目は若干潤んで見える。
たまたまスケジュールが空いて行けた面談の席。

つい先日も似た様な話を聞いた。
ゴルフの森口祐子プロの講演。
と言ってもゴルフ関係の場でなく、日本テニス協会のコーチャーズカンファレンスの基調講演で、だ。
そこで彼女は、師である故・井上清次プロの事を「声はかけてくれないけど、ずっと見ていてくれた」と感謝の意を示していた。

やっぱり最後は人だ。
目の前に相対する人だ。
そしてそこから発せられるメッセージを受け取るアンテナの感度、理解するイマジネーションの広がりが子供、選手にとって重要な能力なんだろう。

「テニスパパ、テニスママのための手引書-How to be a good tennis parents-今、光るテニスキッズになってほしい?それとも、将来光るプレーヤーになってほしい?」と名付けられたテニス誌の記事。
(いい記事だなあ)と感心していたら、その第2回目分の取材に立ち会う事になった。
話は変わるが、この記事を掲載しているテニス誌[S]は頭デッカチな技術解説メインから、読み物としてのクオリティが上がって来ていて好感が持てる。
それはまあいいとして、インタビューでは取材する側とされる側に共通するテニスキッズへのアタタカイ・ハートを感じた。
「最後まであきらめない。失敗しても勇気を持って起ち上がろう」
いいね、応援するよ。

どんなジュニア・トーナメントに行っても、「おいおい!」と言いたくなるステージ・ママならぬ、コート・ママ、コート・パパ、そして「お前はコーチなんだろ-!」と言いたくなる輩を見かける。
これはテニスだけじゃなく、野球もサッカー、そして学校でも同じだ。
子供の頃から失敗する恐怖心を植え付けたり、被害者意識を逆手に取って相手を貶めさせたり、そんな歪みを与えてどうする?
「テニスパパ、テニスママのための手引書」を読んで、ちょっとクールダウンしたらどうだい?
あんたらの子供達へのエネルギーは多分素晴らしい。
ただベクトルの向きが違うだけなんだからさ。

2009.4.9
Kyonancho2
カテゴリー:word
04/10 15:13
04

Scene 256 [長距離走者の孤独]

「選抜始まったねえ」
「ああ、選抜では初の早慶戦が実現するかもなんだよね」
「東京の男子は菅生と大成で、女子が早実と富士見丘だろ?」
「えっ-!何それ?東京は早実と国士舘で神奈川が慶応じゃないの?」
「お前さあ、テニスコーチだろ-!」
「あっ、もしかしてテニスの選抜?そっかあ始まってんだあ」
「フェデラーが来れば“スゲースゲー”騒いで、錦織が優勝すれば“スゲースゲー”騒いで、お前の感性ってプロコーチのそれじゃなくて、マスコミのボリュームそのままの請け売りクン状態なんだな。今日のパリバ・オープンも“マリーとナダルが決勝へ”って見出しだけ見て、フェデラーが準決でマリーに負けたことには気付いてないんじゃないの?」
「お前それ言い過ぎ。俺だってテニスの選抜が今回で第30回で、100校が出る位は知ってんだからよ」
「あっそ」

とにかく春めいて来た。
今日は東京マラソン。
目白通り沿いの地下道を上がった所ではボランティアの人達が打合せをしている。
向こうから来たお巡りさんに「今日知り合いが走るんだけど、この先を左に曲がって専大通りの方へ行くんだよね?」と質問したら、地図を広げて笑顔で説明してくれる。
飯田橋付近は混み合っているので西神田ランプ前の堀留橋に陣取った。
西神田ランプは日本橋川の上で、専大通りも橋によって軽い坂になってる。
まず車いす競技のトップグループが走って来た。
競い合う気迫が伝わって来てグッと来る。
しばらくしたらマラソンのトップランナー達。
速い……。
その後に車いすのおそらく最終ランナー。
マラソン、車いすのトップが難なく走って行った上り坂を両手に力を込めて登ってく。
思わず手を打ち鳴らして応援。
五体満足故の驕りなんかじゃあない。

そして専大通り一杯にランナーの“帯”が押し寄せて来た。
頭の中で(白のアディダスの女性、白のアディダスの女性)と繰り返し、次に(テニスの日の法被を着た男性、テニスの日の法被を着た男性)と繰り返すが、何しろ約35,000人。
余りの人の多さに見つけられる気がしない。
どんなカッコをしてるかわからない知人なんてもうどうしようもない。
動体視力をフル回転したけど、携帯でランナーアップデート(位置情報サービス)で調べた時にはお目当ての友人は10km地点の日比谷を通過して、とっくに西神田は後にしていた。
結局、誰一人見つけられず、大挙して走ってたというタレントにも気付かず。
でも、ずっと手を振り、スティックバルーンを打ち鳴らして応援する沿道の住民。
子供達が差し出す手にわざわざ寄って来てタッチして行くランナー達。
そして延々と陽気なR&Rを演奏し続けてランナーを煽るバンド。
そんな中にいたら、(これってスゲエことだよな。TOKYOのど真ん中でさ。スポーツっていいじゃん)と温かい気持ちになった。

ゴールデン街のいつもの店での打ち上げに、お疲れのケーキを手土産に駆けつける。
主役は42.195km駆け抜けた充実感と無駄がない可愛らしさでスツールにいた。
隣りの席にいるはずの旦那がいなくて呑みかけのグラス。
聞けばお疲れのGODIVAを買いに行ったらしく、強くなった雨の中ずぶ濡れで帰って来た。
可愛いとこあるじゃん。
見せてもらったメダルには“FINISHER”の刻印。
そこにいつもはとんでもない酔っ払い方をする女が男と入って来た。
奴も42.195km完走。
で、これが又いい顔してる。
次の用事もあって、二組のカップルにちょっと当てつけられた気分で早々に店を後にした。

後で聞いたら、俺が帰った後に何と優勝ランナーが店に来たらしい。
「前の晩にたまたまマネージャーが呑みに入って来て店を気に入ったから」とか言ってたけど本当かよ。
ゴールデン街だぜ、三番街だぜ、R&Cだぜ。
羨ましい……。

最後に、祝!WBC日本優勝!

2009.3.24
Nishikanda-rampway

カテゴリー:Tennis
03/25 23:38
05

Scene 255 [SONGS FOR YOU,TRUTHS FOR ME]

ジョージ・P・ペレケーノスの<デレク・ストレンジ・シリーズ>を『曇りなき正義』、『終わりなき孤独』と続け様に読んでる。
Amazonでロバート・B・パーカーの新刊を買ったら「おすすめ商品」に入って来て、普段なら全く気にしないのだが、何気なく読んだ紹介文が頭から離れずに読んでみた。
ロバート・B・パーカーからの流れで、当然出版社はハヤカワ。
シリーズの主人公、デレク・ストレンジは50過ぎの黒人探偵。
第一話の途中から相棒となるのは白人の元警官。
ロバート・B・パーカーの<スペンサー・シリーズ>と正反対の人物設定で、「<リック>で白人を見かけるのは、スプリングスティーンのコンサートで黒人を見かけるようなもんさ」なんて台詞も出て来る。
とは言え、デレクも相棒のクインも(ペレケーノスは-)スプリングスティーンは好きな様で「新車で最初に聴くなら『闇に吠える街』に勝るものはない」なんて台詞もある。
ワシントンDCを舞台にした街の底の話。
余りに生々しい描写に一瞬怯んだりもするが、一貫している“生きる”ってことの素晴らしさとはかなさが紡がれて行く物語に引き込まれる。
終わりの見えない憎悪と諦観の中で、まっとうに生きようとする生命力。

ちょっと前に、友達との遊びの誘惑に負けてテニスの練習をさぼった子の事を思い出す。
あの時俺は悲しい気持ち、がっかりした気持ちを伝える前に、それ故に発生した怒りに任せていなかったか。
彼は多分“怒られた事で後悔はした”だろうけど、“叱られたのは、と反省はしなかった”だろう。
本音が伝わらないもどかしさの前に、物事の本質を伝える努力ってやつをおこたっちゃうとな。……何て物わかりのいい大人ぶってみても、頭の裏っかわだか、いや善人面の裏っかわでは、(ストレートな物言いの中の真実、愛情に気付ける奴になって欲しい)なんて考えている。
多分それはてめえの未熟さを子供特有の“明日を生きる力”が補ってくれてるだけで、“明日を生きる力”がない大人には通じないことなんだが。

酔い切れず帰ったら、ポストには発売されたばかりのJames Morrisonの新譜。
『SONGS FOR YOU,TRUTHS FOR ME』
ジャケット写真のジェームス・モリソンは、内向的ながら真っ直ぐ前を向いていた1stとうって変わって、憤りを押し殺し疲れてる様にも見える。
まだ音は聴いてない。
“SONGS FOR YOU,TRUTHS FOR ME”
悪い訳がないって気がする。

2009.3.10
Kichijoji ekimae

カテゴリー:Music
03/10 15:17
06

Scene 254 [WORKING ON A DREAM]

いつかそのうちと考えているうちにそのままになったり、手遅れになったりすることが多々ある。
今の街に住んでもう15年以上経つか。
前の街からデカイ公園を挟んだ反対側。
そこに越して来て二つ隣の駅にあるアイススケート場がある事を思い出した。
自分的にいつか観戦してみたいスポーツNo.1のアイスホッケーの試合も開催されている。
早速開催日程を調べてみたらスケジュールが合わなかった。
その後は気がついたらシーズン間際でもうどうしようとなかったり、酷い時は既にシーズンが終了してたりで、結局一回も観戦してない。
そんなこんなで年末、
「活動終了の理由:厳しい経営環境に直面し、様々な経営施策を講じている中、部の運営に係わる経費負担が相当過大となっているため」
というつれない発表。
おいおいと慌ててみても又もやスケジュールが合わない。
「アジアリーグ・プレーオフ・セミファイナル」がもつれれば何とか観れそうだが。

そしてテニス界。
実業団名門、ミキプルーンの休部が発表された。
しかも選手には、日本リーグ男子三連覇の祝勝会で通達されたらしい。
先に休部を発表したアイスホッケー・チームも発表後に全日本選手権二連覇を達成したが、どちらもやるせない。
実業団女子今季3位の荏原製作所も同じく休部。
休部とは言っても、プレイヤーの選手寿命から考えれば廃部に等しい。
世界的不況。
何とか活動の場をと願うだけの自分の無力さを感じる。

スーパーボールのハーフタイム。
スクリーンにギターを抱えたスプリングスティーンとサックスをくわえたビッグマンのシルエットが浮かび上がった。
オープニングはツアー同様「Tenth Avenue Freeze-out」。
2曲目の「Born To Run」で盛り上がった後に演った新曲は「Working On A Dream」。
そしてそのままラストの「Glory Days」になだれ込みショーは終った。
“俺がひいたカードはひどかった でも俺は背筋を伸ばして夢を追い続けている 夢に向かって進んでる”と唄った後の“年老いてから昔の事ばかり考えていたくないけど、多分そうなるんだろう 過去の栄光をちょいとばかり取り戻そうとしても時は短く過ぎ去り 残ってるのは栄光の日々のつまらない話ばかり”というラスト2曲の流れ。
胸が熱くなって何回も繰り返し観た.

笑い飛ばせ!今って名の過去を。

2009.2.25
Higashifushimi
カテゴリー:Music
02/25 22:10
07

Scene 253 [THE ONE NIGHT STAND]

半身浴が好きだ。
風呂を修理しなきゃならなかった時に、湯船を半身浴用に変えた位だ。
前はただボーッと30分程浸かって汗を出すという感じだったのが、いつからか読み物を持ち込む様になった。
本を持ち込むのは最初抵抗があったが、持ち込んでみたらふやけないし、湿気も然程吸った感じがなく、それ以降は平気でどんな本でも持ち込んで読んでる。
新聞は流石にふやけて嵩張るが、どうせ捨てるもんだから、大体夜は風呂で夕刊をチェックして朝刊を読み直してる。

そんな半身浴の最中、目は活字を追いながら頭の中で最近あった事を反芻。
まず浮かんで来るのは、あるプレゼンでのプロテニスコーチの熱い涙。
人に語りかける、話を聞かせる為には情熱がいる。
話が上手い下手じゃあない。

次は強い風雨の中、有明で行われたジュニアのイベント。
アウトコートが使えず、屋根を閉めたコロシアムで可動ネットを増設して、数クラスを同時進行でレッスン。
俗に言う“同業他社”のプロテニスコーチ達が、状況に応じて素晴らしいアドリブを見せる。
狭い呑み屋に詰め込まれて呑む時の異様な盛り上がりにも近いか。
そこには単純に1人のテニスコーチとして、目の前の“テニス・キッズ”達に自分が今出来る全てでレッスンしている熱さがあった。

最後は……。
暗転した武道館に響き渡ったあのドラムのイントロ。
(うわっ!!オープニング“きんぽうげ”だぜ!)
そしてGmのあのリフが炸裂した瞬間に、武道館はちっぽけな小屋になって、俺は涙ぐんだ。
グレートなパフォーマンスはあっという間に人の距離を縮める。
“最後の甲斐バンド”
俺は奴とまだ小学生の息子と娘と一緒にアリーナで観た。
何の偶然か、初めて武道館で甲斐バンドを観た高2の時とほぼ同じ席。
(俺ってもしかして幸せなんじゃねえかな……)
リズムに身体を揺らす奴と、拳を突き上げるガキ達を見てふとそう思った。
この日の話にはおまけがある。
帰りに九段の坂からゴールデン街迄乗ったタクシーの運ちゃんが、ライヴの話で盛り上がってる俺等にこう話かけて来た。
「今夜甲斐バンドだったの?私ねえ、小学生の時同級生だったんですよ。小さい頃からギター弾いて唄ってましたね。中学は別だったから、HEROが売れた時は“やっぱあの甲斐か”って。“よっさん”、“やっさん”って呼び合ってましたから」
当然「お釣りは取っといて」だ。

“生きるってことは一夜かぎりのワン・ナイト・ショー 矢のように走る 時の狭間で踊ることさ”HERO/甲斐バンド

そうだね、これまでも、これからも、“THE ONE NIGHT STAND”。
何てカッコ良く生きれればいいんだが……。

あっ、又一つ浮かんで来た。
ガキ共がコートから帰って来た後、真っ暗な中街灯の下で素振りし始めたんだ。
随分長い時間やってて、「ほら飯だぞ!」って呼んだんだけど、嬉しかったな。

2009.2.9
Kudanshita

カテゴリー:KAI
02/10 23:03
08

Scene 252 [SHAIN A LIGHT]

新宿武蔵野館。
この街に夜な夜な呑みに来てるくせに、ここは初めて。
ワンフロアに100人以下のミニシアターが3つ。
持ち込みのポケ瓶のチェイサーにジンジャーエールを買って中へ。
すぐにいつも通り予告編が幾つか流れ、映画が始まった。

“SHAIN A LIGHT”
まずはストーンズとマーティン・スコセッシの丁々発止で幕が開く。
スコセッシをからかい、煽る様なミックに(相変わらずだなあ)とファン心理で嬉しくなるが、そんなもんが単なるギミックだと、後で改めて思い知らされる事になる。
オープニングは“J.J.Flash”。
スクリーンから発せられるエネルギーに、(うわっ!すげえ)とぶっ飛びにやけながらも涙が滲む。
初めて観たシェア・スタジアム、そして'90年の初来日から何回も観たどのショーよりもバンドは良くなってる。
映画の半ばでキースは「単純にバンドをやるのが好きなんだ」と呟き、ラストの“BROWN SUGAR”を弾き終えた後は、ネックを抱えひざまずいて動かず、暫くしてネックにキスして立ち上がった。
奴等は心底ピュアに“演る”事を楽しみ、とんでもない音楽を産み出し続けてる。
そんな奴等に俺は、相も変わらず「くっだらねえコト気にすんなよ!お前は何者なんだい-!」と、ケツを叩かれてる。

「単純にテニスをやるのが好きなんだ」「単純にコーチをするのが好きなんだ」という気持ちを表現し続けないと……。
ブッキングからホテルの部屋に用意する物まで、ストーンズに関するあらゆるマネージメントをミックが仕切っているのは、全てを自分達でコントロールしたいからだ。
それを揚げ足取りは「金儲け主義」と言うが、そんな奴には本当のメッセージ、“真実”は伝わらない。
アメリカでトップジュニア育成しているコーチのテニス誌でのコラムに、こんな言葉があった。
「ポジテイヴな選手は、ネガティブな言葉で罵倒してもそれをエネルギーに変える。ネガティヴな選手は、ポジティヴな言葉をかけても(自分は駄目だ)と落ち込んで行く。相手が何を言ったかでなく、何を伝えたいかを理解し、自分に活かす事が大事。ネガティヴな選手やモンスター・ペアレントにはそこが欠如している」
“情熱”ってのは、もはや誰にでも通じるものじゃないらしい。

映画ではクリントン一家が来て、ストーンズのメンバーと顔合わせしていた。
ミックは、クリントンが他のメンバーと話している間は無関心に遠くを見つめ、視線が自分に動いて来るとあの笑顔を浮かべてた。
そしてステージでは“Some Giris”を唄った。
あの歌詞をクリントン一家が揃って聴いてる所を思うと面白くなったが、それ以上にやっぱり俺はこう思った。
(本当にこいつらBluesが好きなんだ!)
全く何を今更……。

2009.1.23
Shinjuku Musashinokan
カテゴリー:STONES
01/25 22:29
09

Scene 251 [Take Me Out To The Ball Park]

近況報告が終った後、不意に「ジュニアにいい練習って何かな?」と、やたら大雑把な質問が口をついた。
電話の向こうの奴は、「壁打ちだね」と一言。
郊外というよりは山の中と言った方がいい場所に住んでるトップジュニア強化コーチ。
「お前の家の辺りなら、いくらでも壁打ちボード代りの場所あるだろうけど、ウチの周りじゃまずそんな場所ないよ」

あった……。
しかもウチから自転車で数分の場所に。
「遊歩道を西にちょっと行った所に壁打ちボードあるの知ってる?あそこいいと思うよ」
「それって何となく見た記憶あるけど、どっかの学校でしょ?」
「違うよ、ボール遊びOKの広場で、ちゃんとした壁打ちボードがあるの!」
という訳で、発見して来た家人と、早く行きたくて走り出さんばかりのガキ2人と向かった。

高いフェンスと広場特有の白っぽい砂。
サッカーをやってる中高生、キャッチボールをしてる小学生、そして壁打ちをしてるおじさん。
芋洗い状態とは言わないが、結構密集した中で皆がボールを行き交わせている。
早速、空いてるスペースでラリー開始。
普通の公園と違い、皆が球技をしているので気遣いが少なくていい。
暫くすると「どうぞ!」と、おじさんが壁を譲ってくれた。
子供二人が早速打ち出した。
「どうすればいいの?」なんて事は勿論聞いて来ない。
そして“壁”も何の文句も言わず、ボールを打ち返して来る。
俺はその横で家人とラリー。
途中、ボールを拾いに壁の裏に行ったら、「ドン」「ドン」とボールの音が響いてる。
中学の時、体育館の裏で毎日鳴らしてた音。
結局、次の人が来るまで1時間半、奴等は打ってた。

年明けて元旦。
吉祥寺に初詣と新春ビュッフェに行く前に、せがまれて壁打ちへ。
俺の初打ちが壁打ちになるなんて思いもしなかったな。
誰もいない広場で、一人は壁打ち、もう一人は俺とラリー。
小さな子供がいる二家族が、凧揚げにしに入って来た。
いい感じだ。

そして今日、初めて来た日からこれで6日連続。
子供達に入射角、反射角なんてわかってる訳はないが、“壁”を相手に健闘してる。
「壁打ちだね」と即答した奴の言いたい事がわかる。
テニスにおける集中力、想像力、持久力を養うのに、壁打ちは最適だ。

ところで今日は結構混んでる。
軟庭部員らしき中学生もいる。
彼は、サーブして跳ね返って来た短いボールを追って前に、と繰り返している。
壁打ちしている同士でお互いボールが逸れると、自分のボールは相手に任せて自分は相手のボールを追ったりと、子供同士で気遣いし合っているのが見えて嬉しくなる。

気付くと軟庭の中学生が、壁打ちボードと高いフェンスの向こうの都市農園で、フェンスの破れから出て行ったであろうボールを探してる。
なかなか見つからなくて、そのうち農園の関係者らしき女性二人も加わった。
どれ程経ったんだろうか、30分は経っていただろう。
彼がボールを見つけてボードに戻って来た。
彼にとってボールとは、値段が高い安いじゃないんだと気付く。
そしてちょっとでも(これでスペースが広がるな)と感じた自分が恥ずかしくなる。
大人って奴は常識とか礼儀には小うるさいが、こうやってガキと触れ合って何とか自分の理性を保っているのかもしれない。
さて、次壁打ちに行けるのは……う-ん、4日も後かあ。

2009.1.4
Flower South
カテゴリー:Tennis
01/10 15:56
10

Scene 250 [This Warm December〜A Brushfire Holiday〜]

左の首筋がエラく痛い。
小学生の時に起きがけに犬の散歩に行って、逆に引っ張られて首がしばらく傾いだままになった時以来だ。
しかも今回は気分が悪くなる時もある。
大袈裟なタチなので、(実は深刻な病気だったりして……)なんて、考えたりもして。
知り合いに話しても、「どうせ借金で首が廻らないって言いたいんでしょ!-」と、取り合ってくれない。
とりあえず思い当たる事と言えば……。
寝違えた?いやそれはない。
元々姿勢が悪い。それもここまで痛くなる程の要因じゃないだろう。
むしろ生活態度か。

「珍しく練習場でSWだけでハーフスイングを打ち続けたんだよね」
「それって左手から首にかけて結構来てませんか?」
「えっ-!来てる来てる!」
「練習場のマットって薄いから、小さな衝撃が重なって痛くなったりするんですよ」
「ゴルフにもテニスエルボみたいなのあるんだ。俺、むち打ちみたいだよ」
「もしかしてかなりダフってませんか?」
「うん……」

愛すべき優しいゴルフのティーチング・プロは、それ以上言葉は繋がないで困った様な微笑みを浮かべてる。
スピーカーからは出たばっかりのジャック・ジョンソンのクリスマス・アルバム。
奴が先週入籍したお祝いにプレゼントしたCD。
暖かいアコギの音色が心地いい。
奴とはジェームス・モリスンから始まって、Charのミディアム&バラッドのアルバム、エイモス・リー、そしてジャック・ジョンソンと音の好みが合う。
強いて言えば“ブルー・アイド・ソウル”の友ってやつか。
3コード、4コードの循環コードの気持ち良さが共有出来る。
それだけで奴は信用出来る。

「この間のテニス楽しかったですね!」
初めてのテニスの相手をした時のこと。
ぐだぐだ言って先輩面しても仕様がないと、「ゴルフと同じで拇指球からの運動連鎖だけど、初めてだからローテーションだけやめとこうか」とプレー開始。
あの時も暖かい空気が流れていた。

This Warm December〜A Brushfire Holiday〜

暖かく穏やか冬の日。
世知辛い昨今、こんな日が来年はもっともっと多くあります様に。

2008.12.25
Kamimukoudai
カテゴリー:Music
12/25 13:58
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