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another side of tennis

[Another Side of Tennis] 坂東海 カテゴリー:SION

新宿ゴールデン街バーの片隅のテニスと音楽の与太話です。
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01

Scene 289 [I GET REQUESTS]

「高校の頃憧れてました。10年位前にはここで挨拶させてもらって」
お世辞とわかっていても褒められたり持ち上げられるのは照れる。
「その時俺すげえ嫌な奴だったでしょ?!」
と話の腰を折るのが精一杯。

山中湖のテニス民宿発祥の宿。
母校の中学校の合宿のヘルプに来た。
と言っても東京を出たのが夜8時過ぎだったらから、初日の呑みから参加。
勿論現役の姿はない。
コーチ役のOB達と定年退職したばかりの元顧問に、名誉OBとでも呼べそうな宿主。
今時の部活事情に学校事情とトッポジージョ。
そこに他校のチームが加わって来ての冒頭の会話。
彼と一緒に来てる現役女子選手も入って来て更にコアなテニス裏事情話。
44度の泡盛を開けきる前にお開き。

翌朝のランニング。
「集合」の声に集まって来る連中からはズッタラズリズリと靴を引き摺る音。
ラケットはだらしなく下を向いてブランブランしてる。
とてもじゃないがテニス部員の歩き方じゃあない。
コーチ達からは限られた時間を惜しんで、何とかしてあげたいという気持ちがありありと伝わって来るが、部員達からは「強くなりたい」「上手くなりたい」という気持ちは感じられず、「返事は!」と言われなければ返事もない。
当然コーチへの質問も要求もない。
自我が目覚めだす頃に感じる照隠しの感情が、ポーズからそのまま無関心、無気力、無責任として定着してしまうってのは良くある話だ。
そこのステップの途中で力をつけたり、小さな事でも達成感を味わえればそうはならないんだが、集団の悪循環が加わってしまうと事は厄介なんだよな。
救いはこれ又良くある話だが、一人一人個別に接すると“いい奴”がいるってこと。
コアな存在になれる者を一人でも増えて行けばいいのだが。

山中湖を夕方前に出る時の温度は24度。
湿気もなく車のエアコンは入らない。
それが上野原辺りから熱気を醸しだし、府中で降りたら夕方なのに32度+湿気。
そんな東京で数日後、エアコンの調子が悪い馴染みのバーへ。
エアコンは何とか31度キープしていて、時折「プシューッ」って音をたてて止まり、マスターがリモコンを「ピピッ」と押しての繰り返し。
「電気製品って気持ちが通じるからね!」
まあ座って酒を呑んでる分には十分だ。

今日発売のCDを聴く。
1曲目が流れ出し、二人で「うわっ、これ凄いね」と聞き入る。
“I GET REQUESTS〜Sion With Bun Matsuda〜”
ファンからのリクエストの上位10曲をアコギで録り直したアルバム。
1位から10位迄の順位そのままというのが信じられないいい曲順。
「独りで聴いたら泣いちゃうよな」とマスター。
3曲目が終わり4曲目に入った時、目の奥に涙が滲んだけど、それは黙っていた。

“I GET REQUESTS”
リクエストされる嬉しさ、昂り、誇り。
あの中坊達もいつかリクエストされる時が来るんだろう。
その前にくだらない自己主張じゃなくて、自分を高める為のリクエストが出来る様にならないとな。

4曲目の最後で常連が入って来た。
彼はバンドでギターを弾いてるが、SIONって感じではない。
(もうちょっと聴いていたかったな)という気持ちをマスターからも感じつつ、「暑いよねえ」と与太話がスタートした。
右耳でしゃがれ声を聴きながら、左耳を相手に向け、手を叩いて馬鹿笑いをしているうちにCDは終って、柳ジョージ&レイニーウッドの1981年の武道館ライヴがかかった。
そう、これも人生、これが人生。

2010.8.4
Shinjuku3
カテゴリー:SION
08/10 08:37
02

Scene 277 [41]

東京湾の埋め立て地の突端のゴルフ場で、右に富士山、左にディズニーランドを見ながらラウンドした帰り。
東京フォーラムの横のガード下で打上げ。

「先生、こいつの結婚式の時のスピーチ凄かったですよねえ。いきなり“N君は勉強は出来ない。テニスは下手。全く褒めるところがありません”って来て、学校の先生らしい笑いの取り方だと思いながら、皆その後の盛り返しを期待してたら、そのまま一回も褒めないでスピーチ終了!俺等が“褒めなくて良かったんですか?”って聞いたら、“だって褒めるところがないんだから仕方ないだろ”だもんね」
「そっ、あの時帝国ホテルで金かけたのにさ、結局離婚だぜ」

四十面下げたex-高校生10数名が、30年以上前と変らず老けない顧問先生を囲んで、昔話と最近の馬鹿話で盛り上がってる。

「“昔テニスやってた”って話になるとさ、インハイに出たのと出ないのじゃ全然違うんだよね。俺が“関東高校出た”って言っても“ふ〜ん、そうなの”みたいなね」
「そうそうインカレじゃなくてインハイなんだよな。大学入るともう個人の価値観で興味ある部分しか関わらないからね。野球だってやっぱ甲子園だもんね」
「お前32でしょ?俺で64だったのにさ」
「そうだけど東京都代表って言ったって5位だし、インハイもベスト32で、上には友達が何人いるから、まあこんなもんかなと思ってたんだけど、ちょっとこれから威張っちゃおうかなあ」
「そう言えばどっかで、戦績:都大会単ベスト64って書いてた奴がいたな。戦績って言えば普通、シングルで32、ダブルで16以上であとは“〜大会出場”だよな」

それから約2週間。
又同じ様な面子でラウンド後、東松山の焼きトン屋「大島屋」。
2週間前はプレ大会で、今日が顧問の名前がついた本大会らしい。
年季の入ったカウンターで、刷毛で味噌ダレをしこたま塗って一味をぶっかけたカシラを喰いながら、今日も皆で管巻いてる。

「ゴルフってさ、数字が出ちゃうから異常に拘る人いるよね」
「本当クラチャンの世界なんてシビアですよ。自分がカップインしたら他の人がまだでもさっさと次のホールに向って行っちゃいますからね」
「ま〜じ〜。そうなんだ。俺なんか皆と廻るから楽しいのに」
「まあそこまでやらないとクラチャンにはなれないって事でしょうねえ。俺仕事でテニス誌、ゴルフ誌の両方やってるじゃないですか、それぞれ特性がありますよね」
「ふ〜ん、俺は“テニスがあんなに上手いくせに何でこんなにゴルフが下手なんだ”とか、“テニスが強い奴が100切れないのはおかしい”って煩く言われる」
「それは“ゴルフで100切れるくせに何であんなにテニスは勝てなかったんだよ”とか、“ゴルフで100切れる奴がテニスで戦績を残してないのはおかしい”とでも言っとけばいいんじゃないですか?」
「お前いい事言うねえ……って言いながら、お前今日82じゃなかった?おまけにジュニアの時埼玉No.1だっけ?あ〜あ」

いいんだ、いいんだ、何でも。
それぞれ生きて来た苦みや重みをお互い感じたり、今又顔合わせる様になって楽しんでる事をちょっと幸せに感じたりしてるだけでいいじゃん。

“なにかのせいにする歳でもないし 思い出に浸る歳でもない ただやることをやる歳だ ちったあ鍛えられてるはずの歳だ” 41/SION

2010.2.8
Higashimatsuyama
カテゴリー:SION
02/10 22:00
03

Scene 265 [夏の轍 #2]

「足の裏で地面つかまえてから大きく振ってみな!」
これだけを言い続けてた家族旅行でのテニス。
毎朝二時間が精一杯だったけど、子供達は目に見えて上達してく。

軽井沢から帰って来た翌日。
今度は独り高速バスで山中湖へ。
母校の中学校の合宿のヘルプ。
iPodには“忌野清志郎 青山ロックン・ロール・ショー 2009.5.9 オリジナルサウンドトラック”。
バスが国立府中を通過するという時にかかっていたのは“多摩蘭坂”。
昨日は中学の同級生の親父さんである偉大なスイマーの訃報が報じられていた。
宿に入って、一週間ぶっ通しで参加のOBが4名と聞いて驚く。
そのうちの一人は先日打合せした強化ジュニアスクールの社長。
合宿はもう後半。
彼の喉は潰れている。
生徒達は聞いていた程はだらけていない。
そりゃそうだろう、このかすれ声だ。
どんな展開だったかはすぐわかる。
聞けば数日前の土砂降りの日は山中湖一周マラソンをさせたらしい。
朝のランニングから始まって、激しいドリル、厳しいトレーニング、全てが初体験だった生徒達は文句を言いながらも全員完走。
やりたくないこと、やらされたことでも、終ってやり遂げてしまえば、自分の糧になることがあると気付いただけでも、彼等がこの合宿に来た意義がある。
「お父さん、お前位の時にここ一周したんだぞ」と、助手席にいる子供に話しかける奴等の姿が見える気がした。
とは言え、練習で俺が発した言葉は「返事は!」「走れ!」が殆ど。
体育会系の締め付けでも何でもなくて、最低限の礼儀、集中力を示せない“テニス部の後輩”に何とか壁を越えてほしかったんだが、彼等に通じただろうか。
テニスは上手くなった分だけ、強くなった分だけ見える世界が変って来るんだからさ。

数日後、恒例の日比谷野音でのSION-YAON。
“たまらん事が多すぎる たまらん俺が多すぎる 誰にも見つかりたくないくせに お前に見つけてほしい どうなってんかな 三つから進歩なし”鬼は外/SION
先月末のシオンの友人である女性ロックシンガー、川村カオリの死。
“たまらん事が多すぎる”というフレーズを涙をこらえ切れずに振り絞る様に唄う姿に、グッと来る。
たっぷり聴いてたっぷり呑んで、気付けば打上げの席で友人は酩酊。
家人と娘と一軒で早々に退散……呑み出しが早かったんでそれでも6時間は呑んでるんだが。

そして翌日。
山中湖で一緒だった先輩のスクールのジュニアレッスンを観に行った。
息子を実験台に入会させ、効果測定。
最初から最後まで無駄のないハードなレッスン。
効率よく多人数を廻すとかそういうことじゃあない。
上手くなることだけでなく、強くなることを追求したシンプルで明るいエネルギーに満ちた空間。
(そうなんだよなあ……)と、得意の独りごち。
と、そこに先日の毎トー50歳以上男子複で優勝した先輩が訪ねて来た。
堅気の会社勤めをしているくせに真黒だ。
その辺の若手プロコーチよりも黒いかもしれない。
週何時間テニスやってんだ-!
からかい合い、突っつきあいゲラゲラ笑って、いつかみたいに手を振って別れた。

世間様はこれからお盆休み。
振り返った時、今年の夏の轍が楽しいものでありますように。

2009.8.9
Shiki
カテゴリー:SION
08/10 18:43
04

Scene 259 [すべてはALRIGHT]

“新宿の片隅から”のエンディング。
激しくかき鳴らされるギターにかぶってシオンがこう唄った。

“昨日は車の中で寝た あの娘と手をつないで”

“昨日は”だけで悲鳴にも似た歓声があがり、俺も涙が滲んだ。
シオンは客に、そして天を見上げて「ありがとう」と言ってステージを降りた。

数日後家人を久々に職場迄送って行った帰りにふと思い出す。
(あっ、多摩蘭坂!)
家人の職場は“多摩蘭坂を登り切る手前”じゃなくて、多摩蘭坂を登り切った信号二つ先。
RC命って訳じゃない俺は奴と付き合いだして随分たったある日、「あれっ-!ここ多摩蘭坂じゃん!」って驚いて車を降りて、石垣に書いてあるRCフリークの“落書き”を眺めたんだ。

次の日、テニス界でお世話になっている方のお父様の告別式。
訃報を見た時沈痛な気持ちになりながらも気付いた。
(ここ昨日清志郎の密葬やった場所だ……)
予想外降り続いた雨が朝の雷雨で途切れた晴れ間。
行人坂から目黒川を太鼓橋で渡り、山手通りを越えた辺り。
祈りを捧げ、重い気分で駅に向かって歩き出してから踵を返した。
式場の敷地の隅っこから、チャボがハミングバードを掲げてた辺りに向かって手を合わした。

その夜又降り出した雨の中、真っ直ぐ帰れずに足はゴールデン街に。
俺が「今日お世話になってる方のお父さんの告別式でさ、その会場が-」と言いだすのと、マスターがCDをPLAYにするのがジャストだった。
流れて来たのは清志郎の“Boys”。
“Memphis”が出た後のブッカーT&MG’sとの武道館を2階最後列で大勢でベロベロになりながら観た時の様子がフラッシュバックする。
そう言えばSOLD OUTの野音を塀をよじ登って観たなあ。
“ミラクル”の時で、昼間にボ・ガンボスの代々木公園でのフリー・コンサートを観た後、大挙して急遽野音に行った。
開演から大分たっていたけど、よじ登ってすぐに始まった“いい事ばかりはありゃしない”は最高だった。

「このCD貸したまま返って来ないんだよなあ」「こんないいアルバム返って来ないよ」

本当に一杯だけで帰ろうと考えていたんだが、最後の“MTN”迄聞いて席を立った。
帰ったら家族はまだ起きてて賑やか。
風呂につかってノンビリしてたら、「あ-っ!」という家人の声が聞こえて、娘が半べそをかいて「ごめんなさい」と謝りに来た。
小さなプラスティックのサーブ練習機で素振りをしてたらすっぽ抜け、液晶TVにぶつかり、液晶は「パリン」と音をたてて、下半分が黒地に奇麗なレインボーカラーの格子模様に姿を変えたらしい。
翌朝メーカーに電話すると「そうですねえ、一番高い部品ですから14万5千円位かかっちゃいますね。買った方が安いかと」。

“金が欲しくて働いて 眠るだけ”
頭の中で清志郎が、「しょうがないじゃん」と笑ってた。

2009.5.10
Tamaranzaka
カテゴリー:SION
05/10 12:49
05

Scene 245 [宝物]

二の酉で賑わう花園神社。
不景気だから混んでるのか、不景気でも混んでるのかわからんが、参道は歩くのもままならない。
(失敗したなあ……)とゴールデン街への抜け道に選んだのを後悔しつつも、テントの中で呑んでる大勢の客を見て何か嬉しくなる。
やっと辿り着いたいつものカウンターで四つ薔薇を一口。
後から入って来た歳の離れた男女の、どうでもいい会話にたまに茶々を入れながら呑んでたら、呑み屋野球チームの仲間が入って来た。
奴は某スポーツ新聞社の五輪系担当。
「伊達凄いですね」と来たんで適当に話を流してたら、やっぱりこう来た。
「日本のテニスやばくないですか-!38才で12年振りの復帰で半年後に18年振りの全日本優勝って、そんなんでいいんですか-!他のスポーツじゃ考えられないですよ!」
全くこいつは何でも大袈裟に、おまけに深刻そうに話すからタチが悪い。

「伊達勝っちゃいましたね」「えっ-!う〜ん」
全日本の女子準決勝の後のテニス関係者からの電話。
昨年優勝のトップシードを破っての決勝進出。
そのトップシード選手がAIG SUNDAYでの公開練習で、ボールが途切れる度にコーチの方を振り返るのを観ていた時に感じた不安が蘇った。
“勝っちゃいましたね”は、テニス関係者の本音だろう。
伊達選手が出場したからマスコミが取り上げ、テニスの露出が増えるという“痛し痒し”もある。
とは言えどんな時でも、起きた事をフラットに受け止め即動いて、現状を楽しむしかない。

店の中にはざらついた声が流れてる。
デモテープ特有の、シンプルなギターとハーモニカのテイク。
店の中の会話が途切れると嫌でも耳を奪う声に、カップルは慌てて言葉を繋ぐ。
“前にも言われたもんさ 「奴も終わったな」 好きに言われたもんさ 「奴も終わったな」 何もできない奴には言わせとけ もしかして妬いてんのか 言わせとけ 悪いな面白くなるのはこれからさ なにしろ面白くなるのはこれからさ”宝物/SION
“Naked Tracks〜光へ〜”いいアルバムだ。

奴とは家が近いことがわかって、行きつけの天ぷら屋とイタ飯屋を教えてやる。
「今度ガキと行きますよ!ありがとうございます」と紙ナプキンに店の名前を書いてた奴が、書き終えた瞬間顔を上げて今度は、「そう言えばインタビューもドタキャンしたじゃないですか!プロ選手としてあり得ないですよ!プロ選手にはインタビューに答える……」
わかった、わかった、俺が謝るからよ、今はゆっくり呑ませてくれよ。
後で“ここにいない誰か”の話じゃなくて、お互いの“宝物”の話でもしようぜ。

2008.11.17
Shintoshin-Hodokyo
カテゴリー:SION
11/20 23:21
06

Scene 237 [足りない数ばかり数えてる]

嫌なニュースばかり目に入るし、耳に入る。
それは別にマスコミっていう魑魅魍魎としたブラックボックスが作り上げた劇的な話だけじゃない。
俺達の抱えてる自意識過剰、被害者意識って奴が生み出すちんけな話の方が山盛りだ。

好きなことで集まった仲間。
ましてその好きなことを生業に選んだ仲間。
テニスをしてれば勝者、敗者はある。
先輩、後輩もある。
でも最後はみんな、It’s Only Tennis(But I Like It)だろ。

シンプルに、ポジティヴに、そしてアグレッシヴに前に進みたいんだ。
「いつかモノにしてやろうぜ!」っていうロングレンジの話。
「これはたったこの今からやんなきゃ!」っていうショートレンジの話。
本当は皆わかっているんだよな?
ガキみたいに、ないものねだりで自分の都合のいい悪いだけで、笑ったり泣いたりする為の仲間でもないし、ましてそんな時間は更々ないのもわかっているんだよな?
俺はここんところ、iPodをリピートにしてずっとこんな曲を聴いてるよ。

死にそうになるまでは 生きてることを忘れてる 感謝はむずかしい
ちっぽけな並の暮らしに ちっぽけな忙しい日々に 感謝はむずかしい
喜びは すぐに当たり前になり 新しい悲しみにぶつかるたびに
足りない数ばかり数えてる 足りない数ばかり数えてる

お日さまみたいな顔して暮らしてたら お日さまにやかれてしまう 感謝はむずかしい
暑い夏は 冬の方がいいと言い 寒い冬は まだ夏の方がましと言う
足りない数ばかり数えてる また足りない数ばかり数えてる
足りない数ばかり数えてる また足りない数ばかり数えてる

死にそうになるまでは 生きてることを忘れてる 感謝はむずかしい 感謝はむずかしい

“足りない数ばかり数えてる/SION”

2008.9.22
Kabukicho1
カテゴリー:SION
09/25 22:10
07

Scene 229 [住人〜Jyunin]

「“音楽に生きる”のか、“音楽で生きる”のかって聞かれたら、“音楽に生きる”って答えたい。でもなかなか難しい」

言葉はうる覚えだが、確かシオンのモノクロのインタビュー記事。
これを自分に置き換えてみる。
「“テニスに生きる”のか、“テニスで生きる”のか」
テニスでなくてもいろんな種目、業種、そして自分自身の“仕事”を“生業”と考えた時に、そのバランスが大切なんだろうが、失っちまったら取り返しのつかないものがある。

“死んでもなりたくなかった奴に 生きたまま近づいちまってる なまけてる優しさを そこらじゅうにバラまいて”お前だけ見られたら/SION

炎天下のテニスコート。
数面並びのコートでジュニアレッスンが展開されてる。
パッと見ただけで、コーチそれぞれの“気持ち”が伝わって来る。
セミナー、マナー講習でやたら言われることらしいが、声のトーン、眼の表情は何よりも雄弁だ。
溢れ出る情熱、隠し通せない倦怠感。
マニュアル云々でどうにかなるもんじゃあなく、一コーチである自分という個が、公であるテニスにどう関わりたいのか、どう関わっているのか、どういうポジションに行きたいのか、どういうポジションにいるのか、テニス史の流れはどうなのか、テニス史の流れをどう意識しているのか、自分の目線と足元に自然と力が漲っていれば大丈夫だ。

確か昔は「西洋乞食」って名前のバーだった所に出来たライブハウス。

“嬉しいのはあなたに褒められることで 悲しいのはあなたに裏切られることで 好きだから嫌われたくなかったし 好きだから許せなかった”薄紫/SION

ハモニカ横丁でしこたま呑んでから入ったせいなのか、イントロだけで泣いた。
シオンの生き様だから出る声、伝わって来る想い。

“君が空の住人でも俺と同じ地に暮らす人でも そんなことはどうだっていいのさ きれいな心の君が好きだ それだけだ”住人/SION

“きれいな心の君が好きだ”

2007.7.21
Kichijoji ROCK JOINT JB
カテゴリー:SION
07/24 21:28
08

Scene 215 [はやく慣れることさ]

「すぐ慣れるから大丈夫!」
良く聞くし、口にする言葉だ。
言う側には便利で、言われた側も何となくその気になる。

「う〜ん、これは慣れてもらうしかないねえ」
レッスン内容のミーティングの席上で、なかなかいい案が出なかった時のこと。
「私が以前教育関係の仕事を手伝っていた時は、子供達に勉強でも生活面でも『慣れろ』というのは禁句で、それを口にするのは教育者の職務放棄と言われてましたよ」
場が一瞬シーンとして、ピリッとした空気になった。
テニスが好きで、子供達の指導に情熱を燃やしてる者同士の集まりでさえこうだ。
自分達が出来て当たり前の事をついつい軽く考えてしまう。
“慣れ”は“鈍さ”に直結するってのもわかってるくせに。
それからそのスクールのコーチは、プレーヤーを「すぐ慣れますよ」と励ますのでなく、具体的な方法を提示することに腐心する様になった。

コナーズの両手打ち、ボルグのトップスピン、マッケンローのサーブ、最近ではナダルのコートカバーと、皆“異様”だ。
慣例に“慣れた”末のプレーじゃない。
「こうあるべき」という考えから抜けられないイメージが貧困なコーチ、自分が体験して来た中からしか指導出来ないコーチには手に負えない暴れ馬。
マッケンローじゃないが、態度が悪ければ“テニス界の異端児”とでも呼ばれるんだろう。

テニス誌で「日本人プレーヤーはディサプラン(精神修養)が強すぎるため、自分に合わない、嫌なことでも、受け入れようとして、ストレスをためてしまいやすく、またリスペクト(相手を敬う)する気持ちが強すぎるため、コーチの言うことに服従したり、強いプレーヤーに対して絶対に自分の方が優れていると思えないのです」という記事を読んだ。
「日本人プレーヤー」を「日本のサラリーマン」に置き換えて、「コーチ」を「上司」に、「プレーヤー」を「同僚」とか「取引先」にしてビジネス誌に載せたら、何の違和感もない。
自分の周りだけは、アイデアと愉快なハプニングが満ち溢れてるいる様にしたいもんだが、それすらも誰かが見栄から始まる知ったかぶりと背伸び、保身に走るセコさが生む被害者意識に邪魔をされたりして、上手く行かないんだよなあ。

でもこの記事はこう続いて、何だか救われる。
「このディサプラン、リスペクトが強すぎるプレーヤーはグレートプレーヤーにはなりにくいものです。なければもちろん上にはいけませんが、錦織君はそのバランスがよかったのです」
せめて、「年上だから」「上役だから」「教師だから」「コーチだから」という傲りで、誰かの可能性ってやつを潰さない様にしたいもんだ。
「そんなのわからないの?」と言った後すぐには訂正出来なくても、後でフォロー出来る優しさ位は持ちたい。

疲れた足をひきづってまだ慣れない街を歩く なにをそんなに急いでいるのか だれもかれもが足早に通り過ぎる 息もできない電車の中で 眼のやり場がないから眼を閉じた むかいのオヤジは俺の足をふんづけたのにあやまりもしない はやく慣れることさ どうでもいいことだぜ はやく慣れることさ 誰かが言った “はやく慣れることさ/SION”

SIONはライヴでこの歌を唄う時、いつも最後に歌詞カードにはない言葉を唄う。
“はやく慣れることさ どうでもいいことだぜ はやく慣れることさ 誰かが言った 無理だぜ”
そう、無理だよな。

2007.4.17
Todainojo

※文中のテニス誌コメントは「スマッシュ2008年5月号」より引用
カテゴリー:SION
04/17 20:10
09

Scene 211 [魔法にかけられて……]

余り乗り気じゃなかったが、家族の付き合いで「魔法にかけられて」を観に来た。
ロビーで携帯が鳴る。
休日気分台無しのダミ声。

「おはようっす」「昨日ちゃんと帰れたんですか?」「帰れる訳ないじゃん!」「だからタクシー乗った方がいいって言ったのに。どこ迄行っちゃったんですか?」「昨日別れた時、俺鞄持ってた?」「持ってましたよ」「本当に?紺色のやつだよ」「わかってますよ。俺が店の人から受け取って渡したんですから。茶色の縁取りでしょ?」「そうそう。やっぱ電車に忘れたな」

昨夜22時過ぎ。
「何時に出れる?」「ラストが雨中止なんで定時の22時半には出れますけど」「“あいつ”に電話で捕まっちゃってさ。じゃあ23時に小便横丁の寿司屋な」
電話の主はウチの社長。
“あいつ”とは某テニススクール代表だが、その前に社長の大学テニス部の後輩で、おまけに俺の中高テニス部の先輩。
全く世間は狭いって言うか、業界は狭過ぎる。
ここんところ“あいつ”からの誘いを2回連続で断わってるのもあって新宿へ。

暖簾をくぐると馴染みの大将が「毎度!久し振り!」と声をかけて来て、俺が二人を見つけて座ろうとしたら、仕草で「本当にそこなの?」と聞いて来る。
ちょっと不思議に感じつつ席についてその意味がわかった。
“あいつ”は完全に酩酲してる。
と言っても乱れてる訳じゃなくて、社長に「ああいうのは許せない」だの、「俺は頑張る」だのクダまいてる。
俺はけたけた笑いながら茶々入れてたけど、社長が「何でも自分に原因があるんだよ」とまとめて帰った頃から、そうも行かなくなった。
“あいつ”はカウンターに突っ伏して起きないから、仕方なく俺が支払い。
(こりゃ電車は無理だよなあ)と、靖国通りに出てタクシーを拾おうとしたら「何時?電車で帰る。大丈夫!」と背筋を伸ばして帰りやがった。
ちぇっ、タクシー便乗しようとしたのに、“あいつ”の方が数段上だった。
これじゃ呑み代払いに来ただけだぜ。
しかしまあショーケース的酔っ払いだったなあ。
それもテニスと言う名の魔法をかけられたって事にしとくか。
お互い一生テニスで浮かれて、テニスでうなされるんだろうな。

映画が終って劇場を出る時に、でかいパネルに目が止まった。

“拍手されるより、拍手するほうが、ずっと心がゆたかになる”高倉健
“いつまでも生徒”吉永小百合

「拍手されたいけど責任は負いたくない」「優しく教えてもらいたいけど叱られたくはない」
挙句の果ては他人の噂と自分の昔話しか出来ない奴等ばかりの今。
「〜される」事を望むより、謙虚に讃える、自分から学ぶ尊さ。
わかっちゃいるんだけど……沁みるなあ……。

そこに今度はゴールデン街からメール。
<シオンのチケット頼むね。ちなみにまだ店>
もう昼過ぎだって言うのに、今日も36時閉店か。

酒を呑まれるよりも、呑むほうが、ずっと心がゆたかになる……いつまでも酔っぱらい……

酒って言う魔法はタチ悪いからねえ。

2007.3.20
Higashioizumi
カテゴリー:SION
03/20 20:32
10

Scene 205 [雪]

(良かった……動いてる)
家から徒歩1分のバス停。
反対方面に向かうバスを見て一安心。

ウチは新宿から電車で15分で駅から歩けば15分超、ついでにタクシーで7,000円。
7年前の市町村合併後、コミュニティバスが走り出し、おまけにバス停がすぐ側に設置されて随分便利になった。
とは言え、今朝みたいな天気の時はちょいと不安になる。
いつだったか、大雪の朝。
車通勤の家人も車を諦め、二人でバス停でバスを待ってた。
流石にいつもより皆家を出るのが遅いのか、並んでる人はいつもより少ない。
雪は相変わらず強く、厳しい寒さの中、ポケットに手を突っ込み、マフラーを首から鼻先迄巻き付けてバスを待つがなかなか来ない。
「これはちょっと異常じゃない?」なんて話していたら、先頭の人が急に駅の方へ歩き出した。
そして次々と皆駅に歩き出して俺等が先頭になってみたら、時刻表の裏側に「大雪が予想されますので運休します」……。
あの時と比べれば今回の雪は可愛いもんだが、やっぱり不安になるし、毎度々々Tokyoは雪に弱い。
そして勿論アウトドアのテニススクールも。

「明日雪降ったら雪かき大変だねえ」と言ってくれる人もいるけど、大体が「雨とか雪の時は来なくていいんでしょ?えっ-!来てるの-!何してるの?」という人が大半だ。
「雪が降ってるうちは雪かきしても無駄」という考え方もあるけど、それは間違い。
雪の後に雪を全部溶かす位の雨でも降れば別だけど、たいていその雨でシャーベット状になって凍結して余計悲惨になるし、何もしないで溶ける位の晴天になればそりゃあレッスンなんで、それまでに雪かきしとかなきゃってことだ。
とにかく、かく量は一緒で、ラッセル車もブルトーザーもない人海戦術なんだから、雪が降っていようがいまいが、積り出したら雪かきスタート。

俺が着いてからすぐに続々とスタッフが集まって来る。
「いや-っ、たまんないっすね!」と口々に言いながらも、顔が何か子供めいてるのは雪の魔力?
「えーっ-!明日雪-!やったあ-!」と喜んでたウチのガキと変わりゃしねえ。

“足は滑るし 歩きづらいし だけど奇麗な 雪が好き ゆっくりだけど止まらない 君に教わった 歩き方で”雪かもな/SION

そして雪かき開始。
コート外の空きスペースにどんどんと雪をかき出して行く。
最初のうちは出しに行く奴、戻って来た奴がすれ違うと、お互いくだらないジョークを飛ばし合っていたのが、徐々に無口になって行く。
そりゃそうだ、テニスコートは本当に広い。
当たり前だけど端から徐々にかいて行くけど、なかなかベースラインが出て来ない。
お客さんに「テニスコートって約何坪だか知ってますか?」と聞くと、殆どの方が「50坪?」と答え、「200坪」と聞くと、「え-っ!」とのけ反るか、「へえ-」と、まじまじコートを見回すかする。
随分前に歌舞伎町の航空写真を見たら、建替え前の大久保病院だかその側にテニスコートがあった。
そりゃあデカかったよ、雑居ビルどころか歌舞伎町のワンブロックよりデカかったな。
まあそんな訳で、テニスコーチがテニスコートの広さを実感するのは、振り回しとかの乳酸が溜る練習でなく雪かきだ。

さて、雪かきもそれなりに進んだ。
でも相変わらず雪は落ちて来る。
「昼過ぎから出来れば……」「夕方のジュニアから出来れば……」とやって来たけど、もうすぐ陽が落ちて凍結し出すからナイターも絶望的だな。
明日も天気は良くないから心配だ。
子供を明日ウチのスクールの「体験レッスンを受けさせてみる」と言ってた友人から、<「子供が明日テニス出来るかなあ」って心配してるんだけど、どう?>とメールが入る。
そうなんだ、俺達にはテニスもレッスンも当たり前だけど、子供達にとってテニスが出来る日は全部Special Day!
まして初めてスクールに来る子にとってはSuper Exiting Special Dayだ!
降る降らない、疲れた疲れてない関係ねえや!
ガツンと雪かきしてアッタカイ店で冷たいビールだ!-

“「疲れた」って言わなくなったのは 君が教えてくれたこと 身体と心をもって生きてんだから 疲れてない奴なんていやしない 冷え込む夜に 熱いコーヒーとラムを少し 静かすぎる気配が 聞かせてくれる 明日の朝は雪かもな”雪かもな/SION

2007.2.3
Minamicho5
カテゴリー:SION
02/07 15:24
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